EXHIBITIONS

流転のなりゆき 武田竜真 福田惠 古堅太郎

2023.09.02 - 11.19

武田竜真 Halftone # Rotterdam & Amakusa(A)(2枚組) 2023

福田惠 永遠の庭(よそ者として、ベルリン) 2006〜07 会場風景

古堅太郎 透明な記念館(部分) 2023

 カスヤの森現代美術館で 「流転のなりゆき 武田竜真 福田惠 古堅太郎」が開催されている。

 漆の特性と歴史に着目する武田竜真は、大航海時代に多くの漆製品が日本からヨーロッパ諸国に輸出されたことから、国間を文化的に 「継ぐ」存在として漆を作品に使用している。また、船によって運ばれたことから、海が土地を隔てる壁でもあるが、遠い異国と繋がる道でもあると考える。この数百年にわたり日本と多くの国々を文化的につなげていた 「漆」という素材を用いて、海が切り開いた近・現代社会の根幹とも言える 「モビリティ(移動性、流動性)」を、波が見せる一瞬の表情を切り取ることで提示する。

 福田惠は、2004年にドイツの首都、ベルリンに移住し、急激な都市開発で消えていく空き地に造花を植え 「永遠の庭(よそ者として、ベルリン)」を制作した。東西ドイツ統合の齟齬と希望を同時に孕む2000年代のベルリンを背景に、大量の造花と共に、めまぐるしく変容する都市に介入する行為は、身体を通じて、塗り替えられていく記憶や歴史に向き合った記録でもある。現在は失われてしまった風景としての 「永遠の庭」は、枯れない造花と共に17年前の都市の記憶を鮮やかに想起させる。

 古堅太郎は、広島の平和記念公園をデザインした建築家の丹下健三が、終戦の3年前に 「大東亜建設記念営造計画」を課題とした競技設計で一等を獲得していたことに注目した。実現されることのなかったこの競技案と平和記念公園のデザインの類似については多くの人が指摘しているが、特に興味深いのは、戦中のプロパガンダ建築と戦後の平和を象徴する建築が似ているという点だ。 「日本の帝国主義から入念に切り離された 『平和』に戦中のプロガンダとの類似を見ることはできないだろうか?」と問う古堅は、上述した二作品のデザインに注目し、戦後の理想的な平和の中に持続される別の視点を探ろうと試みる。

 相反するものが流転し、その意味を変え、場所の記憶と想起に影響を与えていく様を物語る展覧会となっている。