新型コロナウイルスの影響を受け、メガギャラリーとして知られているデイヴィッド・ツヴィルナーが昨年4月に立ち上げた、取り扱いアーティストの新作をオンラインで紹介するビューイング・ルーム「Studio」。その最新回では、ドイツの写真家トーマス・ルフによるシリーズ「tableaux chinois」を公開している。
ルフは1958年ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ。デュッセルドルフ芸術アカデミーを卒業後、建築や都市風景、ヌード、天体など様々なテーマで作品を制作し、コンセプチュアルなシリーズを展開してきた。2000年代以降、ラフは火星上空の探査機が撮影した画像などの天文写真に加工を施し、異なる文脈のなかでイメージを再構築することで、写真というメディアの特性を探求。2016年には、日本初となる回顧展を東京国立近代美術館で開催した。
今回のシリーズは、ルフが昨年秋にデュッセルドルフのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館(K20)で行われた個展で初めて発表したもの。中国共産党がヨーロッパ向けに制作した定期刊行物『La Chine』から毛沢東などの写真を引用し、政治的プロパガンダにおける写真の使用を検証する。
作品には毛沢東や天安門広場などの写真が引用されているが、こうした写真は背景が荒いピクセルによってボカされているように見える。K20のキュレーター、ファルク・ウルフは、同シリーズについて次のようにコメントしている。「ルフはこのシリーズによって、中国共産党のプロパガンダと直接結びついている。彼は雑誌用に制作された絵を壁画のような大きさにすると同時に、背景をピクセルで覆うことでイメージを異様なものにしている。こうしたコード化によって、画像を現代のものへと変容させているのだ」。
デイヴィッド・ツヴィルナーの「Studio」では、同シリーズの画像に加え、K20での個展の展示風景やルフのスタジオの様子、そしてミニ解説動画などを公開。写真に対する既成概念に揺さぶりをかけ続けるルフの最新作にアクセスしてほしい。