4月から工事のため休館していた東京都庭園美術館が11月18日に再オープンを迎える。その幕開けを飾るのが、「装飾は流転する」だ。
人類が衣服を纏い始めて以降、常に存在してきた「装飾」。それは弔いの儀式や、呪術的なタトゥーなどから始まり、ときに形骸化しながらも、時代とともにまた新しい意味を伴い、変化を繰り返して生き残ってきた。本展はそんな「装飾」の現在形に焦点を当てたもの。
館長の樋田豊次郎は本展について、「当館にとってベーシックな展覧会」としながら、今後の同館の方向性については「アール・デコの建物にちなんだ、装飾をベースにした展覧会を行っていく」と話す。また、担当学芸員のひとりである八巻香澄は本展をこう定義した。「『装飾』とは何かを考える過程を展覧会にしています。装飾の地平を拓く作家に参加してもらいたかった」。
参加作家は、ファッションブランド「writtenafterwards」を主宰する山縣良和をはじめ、2014年にヨコハマトリエンナーレで横浜美術館前に大型作品を展示したベルギーのヴィム・デルヴォワ、建築のディテールをシリコーンラバーでそのまま写し取り
作品化する、オランダのニンケ・コスターなど、国籍もジャンルも異なる7組。それぞれの「装飾」表現を見せている。
そのなかでも、とくに注目したいのが、山縣とデルヴォワだ。
山縣は、本展で最新コレクションを中心に、これまでの代表作を含む13点を展示。階段を上がり、2階広間でまず目に飛び込んでくる《神々のファッションショー》(2017)は、ファッションの起源は神々が動物に向けて行ったショーであるという物語をベースに、2010年春夏コレクションから5体を再制作したもの。また北側ベランダに並ぶ、ぬいぐるみや造花などを過剰なまでに縫い付けた《七福神》(2012)など、そもそもファッションとは何か、装飾とは何なのかを強烈に問いかける作品が、刺激的な空間を生み出している。
いっぽうのデルヴォワは、装飾を時代や国を超えて多くの人々が理解できる「イメージ」として再構築し、自らの作品に取り込む。1階の大広間では、スーツケース「リモワ」をイスラム紋様で覆い尽くした作品《リモワ・クラシックフライト・マルチウィール 971.73.00.4》(2015)などを展示。機能と、過剰なまでの装飾という、相反する要素が共存する作品を提示する。同じように、労働の象徴であるトレーラーはゴシック装飾で、タイヤはヨーロッパ中世の紋様によって侵食され、本来の役割から解き放たれている。
このほか、古着の装飾が自然と接続するような《In the Wardrobe》(2017)など、館内のあちこちにささやかな作品を配置した髙田安規子・政子、ペルシャ絨毯をモチーフに古代エジプトやマヤ文明、浮世絵など様々なモチーフをミックスしたコア・ポアなど、多様な「装飾」表現を、歴史あるアール・デコの空間で楽しみたい。