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中谷芙二子

Fujiko Nakaya

 中谷芙二子は1933年北海道札幌市生まれ。父は世界で初めて人工の雪の結晶をつくった実験物理学者の中谷宇吉郎。57年、アメリカ・イリノイ州のノースウェスタン大学美術科を卒業後、パリ、マドリードで絵画を学ぶ。60年に帰国し、62年に東京画廊で日本初個展を開催。66年、芸術と技術の協働を推進する実験グループ「E. A. T.」に参加し、その活動の一環として大阪万博ペプシ館(1970)にて、人工の霧を大量に発生させる「霧の彫刻」を初めて発表する。70年代は、ヴィデオ・アートを軸に活動し、グループ「ビデオひろば」を結成。社会問題を洞察した作品を制作する傍ら、79年に配給会社「株式会社プロセスアート」を、80年に「ビデオギャラリーSCAN」(東京・原宿)を設立し、日本における若手ヴィデオ作家の発掘と支援に尽力する。この功績が認められ、2008年に文化庁メディア芸術祭功労賞を受賞した。

 第2回シドニー・ビエンナーレ(1976)に招聘され、霧の彫刻シリーズ「アーストーク」を出展。80年代から「霧の彫刻」の発表を本格化し、93年には国営昭和記念公園(東京・立川)で《霧の森》を出現させ、「吉田五十八賞」特別賞を受賞した。以後、世界各地でアートとテクノロジーを融合させたインスタレーションやパフォーマンスを展開し、その作品は80点を超える。2017年、父・宇吉郎が研究のために滞在したグリーンランドから着想し、室内での霧の実験を試みた展覧会「『グリーンランド』中谷芙二子+宇吉郎展」を開催。同年、フランス芸術文化勲章コマンドゥール受勲、18年に第30回高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門で受賞。18〜19年にかけて、自身初となる大規模回顧展「霧の抵抗 中谷芙二子」が水戸芸術館現代美術ギャラリーで行われた。