ARTISTS

キース・ヘリング

Keith Haring

© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection. Photo by Akira Kishida

© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection. Photo by Akira Kishida

 キース・ヘリングは1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト、グラフィティ・アートの旗手のひとり。1958年アメリカ・ペンシルベニア州生まれ。78年にニューヨークへ移住し、スクール・オブ・ビジュアル・アーツに入学。80年より「サブウェイ・ドローイング」と称した、地下鉄構内の黒い紙が貼られて使われていない広告板に白いチョークで描くグラフィティ・アートを開始した。リズム感のあるコミカルな落書きは、通勤客のあいだで評判となり、一躍その名が広まった。81年にウェストベス画廊で初個展を開催。翌年にソーホーの大手画廊、トニー・シャフラジでのデビューをきっかけにさらに躍進し、同年ドクメンタに参加。続いて83年にホイットニー・ビエンナーレ、84年に第41回ヴェネチア・ビエンナーレに出展し、オーストラリア、ブラジルなど世界各地で壁画制作を行う。

 日本には83年に初めて訪れ、屏風や掛け軸といった日本特有の家具や道具に墨を用いたドローイングを発表。87年に東京多摩市のパルテノン多摩で約500名の子供らとともに壁画を制作するなど、ワークショップや社会的プロジェクトにも積極的に取り組んだ。「アートはみんなのもの」をモットーとしたヘリングは、自ら作品の商品化を進め、86年、オリジナルグッズを販売する「ポップショップ」をニューヨークに開店。88年、日本にもポップショップ・トーキョーをオープンした。シンプルな線と鮮やかな色で構成されるポップな作風の絵画や版画、ポスターには、核放棄やエイズ予防、LGBTの認知といったメッセージが込められたものも多い。

 88年にエイズ感染の診断を受け、その翌年、恵まれない子供たちへの基金やHIV・エイズ予防啓発運動継続のため、キースへリング財団を設立。90年に31歳で亡くなるまで、アート活動を通してHIV・エイズ予防を呼びかけた。2007年、ヘリングの芸術と思想を引き継ぎ、生涯で残した作品のうち約300点からなる「中村キース・へリング美術館」が山梨県北杜市に開館。