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アメリカン・ポップアートの旗手、 キース・ヘリングと日本文化の関係を紐解く

世界で唯一のキース・ヘリングの作家美術館「中村キース・ヘリング美術館」(山梨県北杜市小淵沢町)が、開館10周年を記念した展覧会「キース・ヘリングと日本:Pop to Neo-Japonism」をスタートさせた。80年代におけるキース・ヘリングの日本での活動にフォーカスし、彼の功績をふりかえる。

「キース・ヘリングと日本 Pop to Neo-Japonism」展会場風景 ©キース・ヘリング財団中村キース・ヘリング美術館蔵

 アメリカン・ポップアートの旗手のひとり、キース・ヘリングの、世界でたったひとつの作家美術館が日本に存在するのを知らない人は意外と多い。医薬品開発支援を行うシミックホールディングスのCEOが本業の、中村和男館長は、仕事でニューヨークを訪れた際にキース・ヘリングの作品に出会い、一目惚れ。収集を続け、2007年に自身の故郷である小淵沢に美術館をオープンさせた。

 今年は、美術館が開館してから10年目にあたる。キース・ヘリング唯一の作家美術館が日本にあるという事実。また彼が日本を愛し、31年という短い人生の間に4回も日本を訪れ、その足跡を残していることに着目し、美術館開館10周年記念展「キース・ヘリングと日本:Pop to Neo-Japonism」が開催されている。去る4月8日に、プレス向けの内覧会と特別企画トークイベントが行われた。

1983年にギャルリー・ワタリで行われた伝説の展覧会の記録写真 ©︎Yoshikuni Kawashima 中村キース・ヘリング美術館蔵

 今回の展示は、大小8つのエリアで構成。エリアごとに、絵画からポスター、書籍の挿絵、巨大なオブジェまで、キース・ヘリングの作品がのびのびと展示され、彼の世界をたっぷりと堪能できる。

 目玉のひとつは、「闇の展示室」の中央に据えられた、1988年に東京で製作された「招き猫」。できるだけ大きな招き猫にドローイングしたい、というキース・ヘリングのリクエストで、スタッフが合羽橋道具街で見つけた一番大きな招き猫をキャンバスにした力作だ。このほか、ヤマハのオートバイにドローイングしたもの、器や扇子など、日本らしいアイテムに墨を使ってドローイングをほどこし、彼自身のスタイルと日本文化を融合させたユニークな作品の数々が展示されている。

 また、1983年にギャルリー・ワタリで行われた伝説の展覧会の様子、88年に東京・青山にオープンしたショップ「ポップショップ・トーキョー」の当時のシーンをうかがえる記録写真や、ぴあが発行していた月刊誌『カレンダー』のキース・ヘリングの作品をあしらった表紙や記事も紹介されていている。

特別企画トークイベントの様子。背景に展示されているのは、1987年にパルテノン多摩で500人の子供達とコラボレーションした作品《平和》《マイ・タウン》(2017年6月25日までの期間限定展示)。(左から)藤原えりみ、村田真、中村和男(中村キース・ヘリング美術館創設者・館長)、梁瀬薫(中村キース・ヘリング美術館顧問) ©キース・ヘリング財団 公益財団法人多摩市文化振興財団蔵

 特別企画のトークイベントに登壇したのは、美術評論家の村田真と藤原えりみの2人。ともに80年代、キース・ヘリングが活躍し、来日した際に、すでにアートの世界で活動をしていた。特に村田は、唯一、ニューヨークまで出向き、キース・ヘリングの密着取材を行った美術ジャーナリストとしても知られている。それだけに、「キースに初めて会ったときの印象は、細長い人」「密着取材では、”サブウェイドローイング”のために一緒に地下鉄の駅を巡った。頭で考えるよりは、手を動かす人だと思った」「読者プレゼントとしてバッジの提供をお願いしたところ、特定の読者だけにではなく、皆に平等に渡るようなかたちであれば協力したいと言われた」といった、キース・ヘリングの人となりがうかがえる、リアルな話が飛び出した。この貴重なトークイベントは、「今、キース・ヘリングが生きていたら、世界にどんな問題提起をし、“アートで社会を変えていく”ことを実践してくれたでしょうか」、という藤原の問いかけで、幕を閉じた。

(左から)藤原えりみ(美術ジャーナリスト)、村田真(美術ジャーナリスト/BankARTスクール校長) ©キース・ヘリング財団 公益財団法人多摩市文化振興財団蔵

 今回の展示は、2018年1月までの長期開催。会期を長くとり、少しでも多くのアートファンにキース・ヘリングの魅力を知ってほしい、という美術館の思いが込められている。

編集部

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