ゲルハルト・リヒターは1932年ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ。64年にミュンヘンとデュッセルドルフで初の個展を開催し、72年のヴェネチア・ビエンナーレを皮切りに、ドクメンタ(5、7、8、9、10)など、多数の国際展に参加。日本では、2005年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で初の回顧展を開催している。また16年には、自身初のパーマネントスペースを瀬戸内海の豊島(とよしま)にオープンさせたことは記憶に新しい。
「Painting 1992‒2017」と題された本展は、ワコウ・ワークス・オブ・アートの開廊25周年記念展として開催されるもの。同ギャラリーが開廊した1992年から2017年までの重要な作品を、リヒターみずからがアトリエで選りすぐり、本展のために展示構成を行った。
会場では、今回が世界初公開となる92年から2000年代の油彩画5点に加え、ケルンやドレスデンの美術館で公開されて間もない最新の油彩画5点のほか、11年に、制作スタイルに大きな変化がもたらされる直前に描かれた抽象画も1点展示。また、風景画《Sils Maria》(2003)や、写真と絵画の関係を考察し続けるリヒターのエッセンスが凝縮された作品として知られる 「Over Painted Photograph」(写真の上に油彩やエナメルで描いた作品)も展示される。
なお、本展開催にあわせ、2冊の書籍が同時刊行。
本展の全出品作品14点と、1993年の日本初開催から国内の個展で発表されてきた代表作の図版約70点をカラーで掲載した、ワコウ・ワークス・オブ・アート開廊25周年記念カタログ『ゲルハルト・リヒター Painting 1992‒2017』と、ドイツで02年に刊行されたリヒター公認の評伝『Gerhard Richter. Maler Biografie und Werk(画家ゲルハルト・リヒター、伝記と作品)』をベースに、近年の活動を新たに書き下ろした新版『評伝 ゲルハルト・リヒター』が美術出版社より発売される。