70年間の創作を通覧
草間彌生にとって過最大規模の個展となる本展は、「21世紀の草間彌生(1)」「初期作品」「ニューヨーク時代 1953-73」「21世紀の草間彌生(2)」「帰国後の作品 1970-2000」の5部で成り立っており、回顧展と近作・新作展があわさったような構成となっている。
会場に入り、まず目に飛び込んでくるのが、草間が2009年から取り組んでいる大型の絵画シリーズ「わが永遠の魂」だ。その展示数はなんと132点。これは、初期にはF100号(162×130.3cm)やS100号(162×162cm)のサイズも見られたが、現在ではS120号(194×194cm)に統一されているシリーズ。本展では、会場の中心となる、もっとも巨大な展示室の三方の壁に作品がびっしりと展示され、花をモチーフにした立体作品とともに、文字通り草間ワールドに包み込まれるような感覚を抱くことだろう。現在、同シリーズは500点以上が制作されており、本展ではその一部を垣間見ることとなる。
続く「初期作品」では、草間彌生が幻覚体験をもとに描いた1939年の《無題》をはじめ、パステルや油彩の作品など、50年代までの初期作品を展示。「ニューヨーク時代 1953-73」では、63年に草間がニューヨークのガートルード・スタイン画廊で行った個展「集合 1000艘のボート・ショー」が、突起物で埋め尽くされたボート《死の海を行く》(1981)を使い、再現されている。
「21世紀の草間彌生(2)」で注目したいのは、鏡を使ったインスタレーション《生命の輝きに満ちて》(2011)だ。草間は、65年にニューヨークの個展で、鏡で囲まれた部屋にオブジェを敷き詰めるインスタレーション《無限の鏡の間》を発表。翌66年には、鏡張りの部屋と電飾を組み合わせた《無限の鏡の間 愛はとこしえ》に発展していった。本作でも、四方が鏡で覆われた空間のなかには電飾が施され、そこには無限に続くかのような空間が出現する。自己と作品の境界線が曖昧になるような感覚を味わうことができるだろう。
また、「帰国後の作品 1970-2000」では、《ドレッシング・テーブル》と《地上の銀》、《最後の晩餐》と《太陽の雄しべ》といった、異なる作品を組み合わせたインスタレーションの展示、あるいは《黄樹リビングルーム》といったインテリアの要素が強いものまでが並ぶ。展覧会の最後に、あらためて草間の表現の多彩さ、幅広さを楽しめる構成になっている。
宇宙の果てまでも闘いたい。倒れてしまうまで
当日行われた開会式では、「私の心の限り、命の限り、真剣につくり続けたこれらの我が最愛の作品群を私の命の尽きた後も、人々が永遠に私の芸術を見ていただき、私の心を受け継いでいってほしい」「私は死ぬまで闘い続けたい」「私が死んだ後も皆さん、どうぞ私の創造への意欲、芸術への希望と私の情熱を少しでも感じていただけたら嬉しい」「私の芸術を死んだ後までも愛してください」と、自らの「死」に対して何度も言及した草間。
その一方で、「私は前衛芸術家として宇宙の果てまでも闘いたい。倒れてしまうまで」と、尽きせぬ芸術への情熱を力強く語る。「わが永遠の魂」と名づけられた本展は、草間彌生の現時点での最高地点と言い切っても過言ではないだろう。
なお本展では展示室以外でも草間のアイコン的作品である《南瓜》などを見ることができるので、こちらもお見逃しなく。