美術手帖 2017年3月号
「Editor's note」

2017年2月17日発売の『美術手帖』 2017年3月号は「草間彌生」と「現代の女性ペインター」特集! 編集長・岩渕貞哉による「Editor's note」です。

『美術手帖』2017年3月号(P8〜9) All works: ©YAYOI KUSAMA

 今号は「草間彌生」特集をお届けします。『美術手帖』では2012年4月号で草間の大特集をおこなっています。世界の「KUSAMA」の評価を不動のものとした、ロンドンのテート・モダンから始まり、マドリードの王立ソフィア芸術センター、パリのポンピドゥー・センター、ニューヨークのホイットニー美術館という欧米の主要美術館4館を巡回した大回顧展「YAYOI KUSAMA」を取材。抽象表現主義からポップ・アート、パフォーマンスや映像、大規模インスタレーションへとコンテンポラリー・アートが表現領域を拡張していく、そのパイオニアとして草間の表現を美術史の中に位置づけながら、その全貌に迫るものでした。

 その後、北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)、南米(アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、チリ)、アジア(韓国、中国、台湾)と草間展の快進撃は続き、地球規模で人々を熱狂させています。これは本当に驚くべきことです。子どもからお年寄りまで全世代、そして地域を問わず世界中でこんなにも親しまれているアーティストは他に類をみない。

 その秘密はどこにあるのだろうか。今回本誌の読者に向けて届けられたメッセージにもある、草間が到達した境地(=思想)とはなにか。生の喜びを謳い、魂を癒し、永遠を見透したいという人類にとっての芸術の核心をなんの衒てらいもなく、命のかぎりに伝えようとするその背中は、見る者の魂を共震させる。

 そして、2009年から始められ500点を超える草間最大のシリーズとなった「わが永遠の魂」─。2月22日から国立新美術館で始まる個展「草間彌生 わが永遠の魂」(P43)では、その約130点が一堂に会します。今この瞬間も日々草間の手から生まれ続けている「わが永遠の魂」の息吹に直に触れられる、またとない機会となるでしょう。この時代に草間彌生という芸術家がいてくれたことに感謝したい。

 もう一つの特集「キャンバスを打ち破る、現代の女性ペインター」では、絵画という媒体を手に、草間彌生ら先達が切り拓いた地平を未来につなぐ女性ペインターたちを取り上げています。彼女たちの率直な姿勢からは、多くの勇気をもらえることだろう。

2017.2
編集長 岩渕貞哉

編集部

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