エコール・ド・パリを代表する画家、藤田嗣治(レオナール・フジタ)。乳白色の肌の裸婦像などで知られる藤田が今年没後50年を迎えることを契機に、日本とパリで展覧会が多数予定されている。
藤田はその人生の約半分をフランスで過ごし、晩年にはフランス国籍を取得したこともあり、日本のみならずフランスでも知名度が高い。そんなパリのマイヨール美術館で2018年3月7日より7月15日まで藤田の回顧展が開催中だ。パリでも親しまれている乳白色の肌の裸婦像のほか、貴重な初期作品や藤田主催のパーティの様子をおさめた映像など、様々な展示品が並ぶ。同展覧会の様子はマイヨール美術館のfacebookでも見ることができる。
また、同じくパリ市内のパリ日本文化会館でも「藤田嗣治」展が予定されている。こちらはパリを中心にフランスで日本文化を紹介する大規模な文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」の公式企画として開催されるもので、会期は2019年1月16日から3月16日。キュレーターは藤田研究で知られる美術史家で文化庁芸術文化調査官の林洋子と、パリ市立近代美術館チーフキュレーターのソフィー・クレブスが務め、藤田の60年の画業を総括する展覧会になるという。
パリまで行かずとも、日本でも相次いで藤田の展覧会が開催が予定されている。
もっとも大きなものは、東京都美術館と京都国立近代美術館で開催される「没後50年 藤田嗣治展」。史上最大級の大回顧展になるという本展は、「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」などのテーマを設けて藤田芸術をとらえるというもの。パリのポンピドゥー・センターが所蔵する代表作《カフェ》やパリ市立近代美術館所蔵の《礼拝》が来日するほか、東京国立近代美術館の《自画像》など、国内外の代表作が揃う。
また、兵庫県・西宮市大谷記念美術館での会期を終え、4月14日から東京・目黒区美術館で開催される「藤田嗣治 本のしごと ―文字を装う絵の世界—」も見逃せない。
同展では戦前のフランスで発行された藤田の挿絵本、1930年代から40年代の日本での出版に関わる仕事、1950年のフランス移住後に手がけた大型豪華本の挿絵などの「本のしごと」を中心に展示。絵画や版画といった「絵のしごと」、さらには藤田が友人に送ったハガキや絵手紙、手作りのおもちゃ、陶芸作品なども同時に展示。藤田の幅広い制作活動を紹介するという充実の内容。
なお、本展は目黒区美術館ののちに6月23日からは静岡県・三島市のクレマチスの丘にあるベルナール・ビュフェ美術館に巡回予定。戦後のパリを席巻したビュフェの常設展示室と同時に楽しむことができる。さらにその後は東京・富士美術館に巡回予定となっている。
これまでも何度も回顧展を開催されてきた人気作家だが、没後50年という節目を迎え、ますます注目を集める藤田嗣治。その60年にも及んだ画業の軌跡を追ってみよう。