今年没後50年を迎え、東京と京都での過去最大規模の回顧展も予定されている藤田嗣治(1886〜1968)。26歳でフランスに渡り、1920年代にはパリで「画壇の寵児」となった藤田は、絵画制作だけでなく挿絵本の仕事にも積極的に取り組んでいた。
当時のヨーロッパでは、希少性の高い挿絵本は愛書家たちの収集対象となっており、フランスで人気画家として地位を確立していた藤田は20年代だけで30冊以上もの挿絵本を出版。その数からは、藤田自身が挿絵本の世界に魅せられていたこともうかがえる。
「藤田嗣治 本のしごと―文字を装う絵の世界―」と題された本展では、戦前のフランスで発行された藤田の挿絵本、30年代から40年代の日本での出版に関わる仕事、50年にフランスに移住した後の大型豪華本の挿絵など、約100タイトルで藤田の「本のしごと」をふり返る。また、絵画や版画、藤田が家族や友人に送ったはがきや絵手紙、手作りのおもちゃ、陶芸作品など、藤田の幅広い創作活動もあわせて紹介する。
本展は、今年1月に西宮市大谷記念美術館(兵庫)でスタートし、目黒区美術館のほか、ベルナール・ビュフェ美術館(静岡)、東京富士美術館にも巡回予定。それぞれの展示は、東京国立近代美術館の藤田嗣治旧蔵本を中心に、開催館や個人の所蔵作品を加えて構成される。