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美術館ファンドレイジング最前線(2) カギは「共感」──寄付行動の変化とファンドレイザーの役割

ミュージアムによるファンドレイジングの「いま」を追うシリーズ「美術館ファンドレイジング最前線」。第2回は、国内における寄付の現状と専門人材のファンドレイザーの役割を掘り下げる。

文=永田晶子(美術ジャーナリスト)

(C)Unsplush

 日本に「ファンドレイジング(Fund Raising)」の言葉が定着したのは2010年代。従来使われた「寄付金集め」に変わり、主に非営利団体が活動資金を個人や企業、行政から集める活動全般を指す用語に使われるようになった。普及の中核を担ってきたのが2009年に設立された認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会(東京)だ。専門人材の育成や倫理指針、実務ガイドラインの策定、実践支援、調査活動などを行い、様々な社会的活動を支える基盤づくりを推進している。

 ファンドレイジングの基盤は言うまでもなく、個人・組織の善意や社会貢献の意識、それを寄せる対象に対する共感と信頼に支えられた寄付や寄贈だ。では、日本における寄付の現状はどうなっているのだろうか。同協会が4年に1回刊行する調査報告書『寄付白書 2021』などを基に、宮下真美事務局次長に話を聞いた。

 まず全体的な傾向として言えるのは、日本人の寄付行動がこの十数年でかなり変化したことだ。調査を開始した2009年に約5,500億円だった個人寄付の総額は、2011年3月の東日本大震災を契機に初めて1兆円を超え、2020年には約1兆2,000億円に上った(金額はふるさと納税を含む)。金銭による寄付を行った人の割合も、09年は約3割だったのが、11年には約7割に跳ね上がり、その後は4割台が定着。とはいえ、先進国の中では寄付総額・寄付者率ともに依然として低い水準にあり、寄付先進国とされる米国と比べると個人寄付の総額は約30分の1に留まっている。

出典:日本ファンドレイジング協会編(2021)『寄付白書2021』

編集部