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「ウィーン工房」と「デザイン経営のデザイン」──ブランドはどのように理想を体現してきたか?

「デザイン史」の視点から現代における様々なトピックスを考える連載企画「『デザイン史』と歩く現代社会」。テーマごとに異なる執筆者が担当し、多様なデザインの視点から社会をとらえることを試みる。第4回は、神奈川大学国際日本学部でデザイン学や文化交流史の教鞭を執る角山朋子が、20世紀初頭にオーストリアで設立された「ウィーン工房」を起点に、企業経営におけるデザインの在り方について論じる。

文=角山朋子(神奈川大学国際日本学部准教授)

華やかな商品が描かれたウィーン工房のポスター 1923 デザイン=ヴァリー・ヴィーゼルティア 引用(Christoph Thun-Hohenstein / Anne-Katrin Rossberg / Elisabeth Schmuttermeier (Hg.), Die Frauen der Wiener Werkstätte, Basel 2020, S. 111)

100年前のデザインと経営

 クリエイティブなアーティストと熟練の職人がタッグを組み、家具、食器、テキスタイル、アクセサリー、置物など、美しい日用品の数々をつくり販売する──。

 現代のインテリアショップで目にしそうなコンセプトですが、これは20世紀の初め、現在のオーストリアであるハプスブルク君主国の首都ウィーンで設立された「ウィーン工房」(1903−32)が掲げた理想です【図1】。ウィーン工房は、芸術家と職人の工芸団体として出発し、オーストリアを代表する高級工芸品会社へと成長しました。存続期間は29年に及び、デザイン史上は、アーツ・アンド・クラフツ運動アール・ヌーヴォーバウハウスアール・デコの時代と重なります。このあいだにヨーロッパは人類史上初の世界大戦を経験し、テクノロジーの進歩と機械化の加速によって人々の生活スタイルは大きく変貌しました。しかし、ウィーン工房は変わらぬ「ウィーンらしさ」を体現するデザインを主軸に、流行を発信し続けたブランド企業でした。

【図1】ウィーン工房製花かごの広告 1909以降 デザイン=ウィーン工房 引用(https://sammlung.mak.at/sammlung_online?id=collect-266340)

 ウィーン工房は1907年前後の経営危機をきっかけに商業的展開へとかじを切り、アーツ・アンド・クラフツ運動の理想をもとに設立された団体としては、まれに見る発展を遂げました。一時期はベルリン、チューリッヒ、ニューヨークにも店舗を構え、昭和初期の日本の工芸雑誌にもその名が登場しています。今回は、「デザイン経営」という観点から100年前のウィーンのデザイン史をひもとき、現代との接点を探ってみましょう。

ウィーンのウィーン工房──都市との結びつき

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