• HOME
  • MAGAZINE
  • SERIES
  • 櫛野展正連載「アウトサイドの隣人たち」:霧の中から立ち上がる…

櫛野展正連載「アウトサイドの隣人たち」:霧の中から立ち上がる命 【3/4ページ】

 その技法も独特なものだ。例えば、綺麗な曲線をつくるために「ムヒのキャップ」の丸みを帯びた形状を土台にして骨組みをつくり、かたちが整ったら外すといった型取りの手法を用いている。方眼紙を何枚も重ねて厚みを出し、一部の表面を剥がして毛羽立ちをつくり、単色ながら素材感の違いを表現するなど、複雑な構造体を組み上げている。最近では「可動域を広くしたらもっとカッコ良くなるかも」と考え、レゴブロックのボールジョイントパーツを骨組みに採用するなど、技法はつねにアップデートされている。

 ハシビロコウ、ラクダ、気球。彼のオブジェが放つ不思議なリアリティは、彼自身の「乗り手」としての視点から来ている。宮崎駿監督・スタジオジブリ制作の『ハウルの動く城』や『天空の城ラピュタ』、あるいはジョージ・ミラー監督の映画『マッドマックス』のような世界観を好む彼は、「想像している世界のシルエットを出してみよう」という決意のもと、制作を進めている。「どういう環境で、どういう動き方をするのか。それを考えるのが一番楽しい。砂漠なのか、平地なのか、あるいは水の中なのか。自分がその乗り物に乗った気になって、操縦席からの景色を想像しながら制作しています」。

ハシビロコウ
ラクダ

 例えば「気球」の制作では、強いこだわりが随所に見られる。習字の半紙を骨組みに貼り、透けないように一枚ずつ重ねて膜をつくることで、独特の重厚感を生み出した。しかし、その気球自体の重みで下の船が潰れてしまうという課題に直面する。そうした構造上の困難を一つずつ乗り越えることで、彼の表現はより強固なものになっていった。ピストルのような形状をした戦車の作品では、普通の戦車よりも独自性を持たせたいと、車輪ではなく「動物の足」を生やした。それぞれの環境下で「どうすれば実際に動かせるか」という理屈を突き詰めていく大陸くんの想像力は、つねにリアリティに裏打ちされている。

気球

編集部