到達点としての「カドミウム・レッド」
最終章「マチエールを排して」の冒頭を飾るのは、菅井の代表作であり到達点とも言える「カドミウム・レッド」のシリーズだ。赤・白・黒という厳格な色彩の制限と、約2メートルにもおよぶスケールで構築された画面が、圧倒的な強度をもって鑑賞者の前に現れる。全40点20組からなる本シリーズの構成をめぐって、膨大な組み合わせが模索されたことを示す写真群も必見だ。


デザイナーの出自や時代の潮流に影響を受けながらも、そこに留まることを拒み、「菅井汲だけの表現」を追い求めて現代美術の最前線を駆け抜けた菅井。本展に出品された初期から晩年までの絵画群と、それを裏付ける綿密な設計図などの資料が、その真実を雄弁に物語っている。



エピローグでは、菅井のプライベート資料や妻・光にまつわる資料が展示されている。「他者からの影響を退け、断固として己を貫こうとしたこと」「過去の作品には執着しないと語りながらも、愛用した道具やマケットを手元に遺し続けたこと」。散りばめられたエピソードの向こうから、「菅井さん」という一人の人物の素顔と熱量が、鮮やかに立ち上がってくる展覧会であった。




















