万博のレガシーはどこへ向かうのか
この「null²ⁿ」は、落合が構想する「計算機自然」の新たな展開の一部でもある。2027年3月19日に横浜で開幕する国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」では、新作となる「null⁴(テトラヌル)」が公開される予定だ。「null⁴」は、同博覧会の「SATOYAMA Village」に設置される生命彫刻館として構想されている。4棟の鏡面体が回転しながら周囲の風景を映し込み、花や空、森、人々の姿を取り込むことで、自然環境そのものを変容させる作品となる。

大阪・関西万博の「null²」が建築的なパビリオンとして「計算機自然」を体現し、横浜の「null²ⁿ」が都市の常設施設としてその体験を再構成するのに対し、「null⁴」では自然環境そのものへと表現の領域が拡張されることになる。こうした展開のなかで、「null²ⁿ」が常設施設であることにも大きな意味がある。
落合は、施設に多くの計算機器が導入されているいっぽう、演出の大部分がソフトウェアによって構成されていることを説明。「例えば中の演出を変えたり、花火と連動させたりと、時期に合わせてこの常設シアターの中も大きく変わっていく」と語った。
つまり、「null²ⁿ」は一度完成したら終わりという施設ではない。今後もソフトウェアの更新や演出の変更によって、作品そのものが変化していくことが想定されているのだ。「これからが新しいスタートです。いろいろなものがアップデートされたり、作品がより良くなっていったりすると思うので、ぜひ一度ではなく、何度も遊びに来ていただければと思います」(落合)。
大阪・関西万博では、来場希望者の多さに対して入場者数が限られたことも課題だった。その点、横浜では常設というかたちで、より多くの人々が時間をかけて作品に触れることが可能になる。
期間限定の巨大イベントで生まれたメディア・アートの体験を、いかに継承し、発展させることができるのか。「null²ⁿ」はそのひとつの試みであると同時に、変化し続けることを前提とした、新たなミュージアムのあり方を提示するものとも言えるだろう。大阪から横浜へ。そして、みなとみらいの都市空間から上瀬谷の里山へ。「null²」が提示した人間とテクノロジー、自然との新たな関係は、場所と姿を変えながら展開を続けていく。



















