スウェーデン・テキスタイルの夜明け
スウェーデンにおけるテキスタイル産業の発展は、18世紀頃に遡る。家庭内での手工業から始まった取り組みは、やがて紡績業へと成長し、産業革命へと至った。戦前まではヨーロッパからの輸入が主流であったが、戦時中の国際貿易縮小に伴い、国内デザインの開発へ注力するようにシフトしていく。黄金期を迎えるのは1950〜70年代であり、本展ではこの時代のデザインを数多く紹介している。


プロローグ「変わりゆく気配のなかで」では、20世紀前半の産業発展前夜に活躍した3組の女性たち、エルサ・グルベリ(1886~1984)、エストリッド・エーリクソン(1894~1981)、ゴッケン・ヨブス(1901~61)とリスベット・ヨブス(1909~62)の姉妹を紹介している。彼女たちはデザイナーでありながら起業家としても手腕を振るい、国内のテキスタイル産業を大きく飛躍させた。
ここでは、スクリーン・プリント工房の設立により表現の幅を広げたエルサの取り組み、色鮮やかで有機的なパターンを展開したエストリッドの作品、そして家族経営の工房でスウェーデンならではのモチーフを繊細に描いたヨブス姉妹の作品群を、当時の写真資料とともに紹介している。


第1章「モチーフが織り成す物語」では、スウェーデン・テキスタイルに親しんでもらうため、「草花」「果物」「動物」「幾何学」「日本」「暮らし」「物語」「サマーバカンス」という8つのテーマ別にデザインを分類して展示している。身近な自然や生活様式、愛らしい動物といった具象的なモチーフから、抽象パターンや日本的イメージを落とし込んだ作品までじつに多彩であり、視覚的にも楽しませてくれる空間となっている。
ここから伺えるのは、スウェーデンの風土に根差す「自然への敬意」「伝統的な装飾性の継承」「モダニズムに基づく機能美への志向」といったものづくりの姿勢だ。グラフィックな意匠の奥には、つくり手が暮らす土地の思想や哲学が息づいている。



続く第2章「デザインを紡ぐ人々」では、戦時下で国内テキスタイルデザインを牽引した重要デザイナー6名に注目し、イェータ・トレーゴード(1904〜84)、アストリッド・サンペ(1909〜2002)、ヴィオラ・グローステン(1910〜94)、イーネス・スヴェンソン(1932〜2005)、スヴェン・フリステット(1940〜2025)、チキ・マットソン(1947〜)の個性あふれる作品を資料とともに取り上げる。それぞれの独創性を堪能できる、見応えのある章だ。
マリメッコに代表されるフィンランドのデザインと比べると、スウェーデンのデザインにはどこかシステマチックな構造美が際立つ。そのいっぽうで、従来の配置や配色のルールを飛び越えた実験的な作品が見受けられる点も興味深い。



















