「川内理香子 LOVE, Wild Grape, Tiger, heart」(大田区立龍子記念館)開幕レポート。絵画のなかに線と身体の交歓を見る【2/3ページ】

川内理香子と川端龍子、交錯する互いの絵画

 展示室に入ると、まずは川内の油彩画《LOVE》(2024)が目に入る。赤や紫、白の絵具で描かれたハート型の厚塗りに、植物や身体、文字などが絵具を削り取るようにドローイングされている。赤紫の壁紙と暗がりから浮かび上がるような照明によって、川内が身体性をともないながら平面へ向き合う作家であることを来館者に強い印象をもって伝える作品といえるだろう。

川内理香子《LOVE》(2024)。暗い展示室のなかで作品が浮かび上がるように照明が演出されていた
川内理香子《Baby》(2022)キャンバスに水彩 299×140.9cm。約3メートルの迫力ある紙に水彩と鉛筆のみで強度を持った画面をつくり出している

 続いて展示されている川内の《Baby》(2022)は、高さ約3メートルにもなる巨大な紙に、水彩と鉛筆を組み合わせ、手や乳房、性器、頭部といった身体の部位を思わせるかたちがドローイングされている。しなやかな線描と、水彩のにじみをいかした彩色によって、少ない要素で巨大な画面に負けない強度を成立させており、川内の作品において重要な要素であるドローイングの魅力を感じることができる作品だ。

左から川端龍子《虎の間》(1947)245.4×727.2cm、《水牛》(1961)81×100cm ともに紙本彩色・額

 続いて《水牛》(1961)、《虎の間》(1947)、《獺祭》(1949)、《賭博者》(1923)と、川端龍子の日本画が並ぶ。いずれも緑青の鮮やかな発色が目を引く植物の描写が印象的な作品で、川内の植物描写と対比しながら見ると興味深い。また、龍子が南洋(1934)や中国(1937~40)で描いたスケッチが並ぶガラスケースがあり、その背後の壁面には川内のドローイングが並んでいる。それぞれが対象をどのように線によって写し取ろうとしていたのかを比べることができる。

左から川内理香子《The tiger jumps over a dancing pretzel》(2024)キャンバスに油彩 181.8×227.3cm、川端龍子《山葡萄》(1933)絹本彩色・額 174×220cm
ガラスケースの中が川端龍子の南洋でのスケッチ、壁面が川内理香子のドローイング作品

 また、豹が描かれた《Forest of the night》(2019)や虎がモチーフとなっている《The tiger jumps over a dancing pretzel》(2024)といった川内の油彩画と、龍子の《秋縁》(1947)を比較することで、それぞれの動物描写の違いを汲み取ることもできるだろう。また、龍子には珍しい裸婦を描いた《山葡萄》(1933)の身体を表現する描線には、川内と共通するものが見て取れる。

右の下駄箱の上に展示されているのが川内理香子《Strata》(2025)石 26×19×3cm
川内理香子《touch of volume》(2021)ネオン管、鉄製の額 78×340×29cm

編集部