旧六甲スカイヴィラ
風の教会から徒歩5分ほどの場所にある「旧六甲スカイヴィラ」は、閉館した宿泊施設だ。客室から廊下、浴場にいたるまで、館の全館を使用して展示がおこなわれる。


玄関を入ってすぐのエントランスでは、屏風画、立体、映像によって構成された鴻崎正武による巨大インスタレーション《六甲雲上神戸獣楽譚》(2026)が展開されている。鴻崎は神戸の郷土玩具「神戸人形」と「神戸だるま」を組み合わせ、異形の姿を立体や平面に表した。文化の混在と時間の混濁が、神戸という都市の持つ力につながっていく様を表現したという。

彫刻家・伊藤幸久は、絨毯敷きのレクリエーション等で使われていたであろう大部屋で、樹脂製の塑像とリール、照明、小道具などを組み合わせたインスタレーション《Go far》を展開。教習所に通い始めたことで、幼いときからいまに至るまでの様々な「移動」にまつわる記憶を、道路に見立てたリールと塑像の演技で表現。照明の電源もこのリールを経由して供給されている。鑑賞者が移動できる空間に、ひとりの人間のなかに閉じ込められていた記憶と時間を表現した作品だ。

梅沢和木は、かつて「プレイルーム」と呼ばれていた和室空間の襖や床の間に平面作品を展示。インターネット上の膨大な画像をコラージュし、そこにペイントを加える「遊び」を空間全体で表現した。また、室内のテーブルには、この部屋に保管されていた子供が遊ぶことができる玩具が整然と置かれており、これらを手にとって遊ぶだけでなく、机上の写真をもとに玩具を元の位置にパズルのように戻すという新たな遊びの提案も行われている。

台湾在住のアーティスト、荘禾(チュアン・ホー)は、かつて浴場だった空間で「見えざる確かな存在」をテーマに、アニメーションとドローイングを用いた作品を展開。半透明のスクリーンに海の景色を投影する《着作是海/Seen as the Sea》と、極めて小さく描かれた人や動物が動き出すことで鑑賞者の記憶を呼び起こす《速処/Faraway》(ともに2026)を暗闇のなかで対峙させた。
ほかにも旧六甲山ホテルを改修したレストラン「六甲山サイレンスリゾート」も会場となっている。
六甲山観光と阪神電気鉄道という企業を主催に、観光地・六甲の魅力を再発見することを目的に毎年開催されてきた「神戸六甲ミーツ・アート」。純粋に景観や自然を楽しむことに加えて、都市生活者が休暇に訪れる「観光地」という近代的な価値を、アーティストの視点を通して改めて考えることができる芸術祭となっている。



















