「神戸六甲ミーツ・アート 2026 beyond」開幕レポート。観光をしながら「観光」という行為をアーティストとともに考える【3/5ページ】

六甲高山植物園

 ROKKO森の音ミュージアムから歩いて5分ほどの距離にある六甲高山植物園。ここは山上の冷涼な気候を生かし、世界の高山植物や寒冷地植物、山野草など約1500種を栽培する植物園だ。同園内の各所でも作品が展示されている。

阿部文香《猪は山を嗅ぎ、 人は山を語る。そして 山は私たちを見る。》(2026)。なめした猪に、その眼球をレンズにして撮影した写真をプリント

 光や有機素材を用いて作品を制作する阿部文香は、六甲山で駆除されたイノシシのなめし革を支持体とする作品《猪は山を嗅ぎ、 人は山を語る。そして 山は私たちを見る。》(2026)を植物園のビジターセンターの天井から吊り下げた。革にはイノシシの死後すぐ、濁る前に取り出した眼球の水晶体を使って撮影した写真をプリント。害獣として問題となっているイノシシの姿と、この動物が見ていたであろう景色を重ね合わせた。

則松夏凜《FLORA OF MIAKNVA ―ミアクンバの植物―》(2026)。架空の植物を描いた植物画が、天井からの吊り下げや壁面などで展示されている

 同じくビジターセンターでは、則松夏凜が《FLORA OF MIAKNVA ―ミアクンバの植物―》(2026)を展示。会場に並ぶのは、機械植物が生えている架空の大陸「ミヤクンバ」で記録された植物画や風景スケッチ、文字記録だ。さらに六甲山植物園開園の契機となった、日本の植物分類学の草分けである牧野富太郎の『大日本植物図』(1910-11)もともに展示することで、未知の植物に向けた想像力と、分類という行為の興味深さが提示される。

田口一枝《Rokko Prism》(2026)。水面の反射と併せて作品を成す
斉藤七海《ディスコ》(2026)。池のなかのには作家本人の顔の

 屋外でも田口一枝が池の中に設置した光の反射を扱うインスタレーション《Rokko Prism》(2026)や、自然に溶ける作家自身の願望を表現した斉藤七海《ディスコ》(2026)、六甲山の石を浮かせることで石の神聖を前景化する松井照太の《石のさいだん》(2026)などが展示されている。

松井照太《石のさいだん》(2026)。石を浮遊させ祈りの場のような空間を創出していた

開発さんの小屋

「アスレチックパーク GREENIA」の第3駐車場に隣接するパークの入口にある売店跡は、開発好明が単独で作品を展示する「開発さんの小屋」となっている。

開発さんの小屋の外観。山頂の小屋にサーフショップのような看板が設置されている

 開発は会場内部に砂を敷き詰め、ベンチやサンダルを用意し、さらに記念撮影用の「顔ハメ」も設置。遠く瀬戸内海を望むこの場所に、遠景としての「ビーチ」をインスタレーション《六甲ビーチ》(2026)として出現させた。

開発好明《六甲ビーチ》(2026)。小屋のなかにはビーチを模して砂が敷き詰められた