「神戸六甲ミーツ・アート 2026 beyond」開幕レポート。観光をしながら「観光」という行為をアーティストとともに考える【4/5ページ】

六甲ガーデンテラス/自然体感展望台 六甲枝垂れ

 「六甲ガーデンテラス」は、六甲山の山頂付近・標高約880メートルに位置する日本有数の眺望スポット。夜になると神戸市街の夜景を望むために多くの人が訪れる場所だ。

わにぶちみき《Walking Scapes - 解像度 -》(2026)。神戸市街の眺望をドットによって分解した作品

 展望デッキでは、風景から色を抽出し抽象化を突き詰めた風景画を描く画家・わにぶちみきが《Walking Scapes - 解像度 -》(2026)を屋外展示している。アクリル板を支持体に六甲山からの眺望をドットで描き、眼下の風景を借景するように展示した。本作により、多くの人が記念撮影をするこのデッキが、風景を「借りる」とはどのようなことなのかを思索する場にもなっている。

四方謙一《景色が削り出される》(2026)。覗き込むことによって、風景画万華鏡のように分解される

 場の構造に興味を持つ四方謙一も、六甲山からの眺望を利用した作品《景色が削り出される》(2026)を設置した。展望台にステンレスを削り出した巨大な万華鏡を設置し、神戸の風景を鏡面にいくつも反射させ架空の都市がそこに出現するような体験を提示している。

reiko tsubota《夕暮れをずらす》(2026)。夕日が鏡面に反射することで、太陽の一をずらそうとする作品

 reiko tsubotaは、駐車場横の空きスペースで《夕暮れをずらす》(2026)を展示。本芸術祭の公募大賞に選ばれた本作は、斜面に設置された鏡面で構成された作品で、夕日の光を周囲に反射させ「ずらす」ことで、時間の経過や地球の自転の摂理について問いかける作品となっている。

自然体感展望台 六甲枝垂れ、手前の鳥の作品は木村崇人《風と渡り鳥》(2026)

 ガーデンテラス横の小高い丘にある「自然体感展望台 六甲枝垂れ」は、六甲山上でもっとも標高の高い展望台とされており、三分一博志によるヒノキの枠組みに囲われた六角形の建築が印象的な施設だ。

岩谷雪子《六甲に生きる植物たち》(2026)。「六甲枝垂れ」の底部に植えられた植物

 施設の窓ガラスや通路の壁際、内部のベンチの肘掛け、水盤などには岩谷雪子による、六甲の植物が展示されている。本作《六甲に生きる植物たち》(2026)は、岩谷が植物を選び抜き、会場内で新たな環境を構築するように再構成した。

大東真也《魂の行方》(2026)。廃材の瓶を加工したガラスや六甲産の石を使用している

 また、施設内では廃棄予定のラムネ瓶のガラスなどを変形させた大東真也の有機的な立体作品《魂の行方》(2026)が、施設の外では渡り鳥の群れをいくつもの風見鶏で表現した木村崇人の《風と渡り鳥》(2026)が展示されている。

風の教会

 安藤忠雄の設計で知られる「風の教会」(1989)は、本芸術祭にあわせて通常非公開である館内を会期中限定で公開。礼拝堂では棚田康司の作品《届かない橋を渡る》(2026)が展示されている。

棚田康司《届かない橋を渡る》(2026)。礼拝堂に足を踏み入れると作品の少女と目が合う

 一木から彫り出された花を持つ木彫の少女像が、台座の上の立ち来訪者と向き合っている。また、少女と向かい合った壁面にも、着彩されていない木彫の少女像が設置された。詩人・茨木のり子の強く生きる姿と言葉を像に投影したという本作が、コンクリートに囲まれた安藤建築のなかで生きる力とは何かを問いかける。

加治聖哉《山犬/猪》(2026)。山犬とイノシシが距離を保ちながら配置されている
伊藤大寛《Angel Dust ~骨まで溶けるような熱いキスをして~》(2026)。着想源はグスタフ・クリムトの《接吻》(1908頃)だという
野田満《Monster Tree》(すべて2026)。一見すると小高い丘だが近づけばこれが巨大な切り株であることがわかる

 教会の周囲の空き地にも屋外展示作品がある。ここでは加治聖哉の建築現場の端材で動物の姿を制作した《山犬/猪》や、伊藤大寛のふたりの人物が溶け合うような彫刻《Angel Dust ~骨まで溶けるような熱いキスをして~》、巨大な切り株に六甲の開発の歴史を投影した野田満《Monster Tree》(すべて2026)などを、ランドスケープのなかで堪能することが可能だ。