ソットサスが率いた「メンフィス」
ソットサスの活動として広く知られているのが、国際的なデザイン集団「メンフィス」の立ち上げだ。メンフィスという名称は、グループ結成のきっかけとなった会合で偶然流れ続けていたボブ・ディランの曲「メンフィス・ブルース・アゲイン」に由来している。同団体にはマルティーヌ・ブダン(1957〜)やアルド・シビック(1955〜)、ミケーレ・デ・ルッキ(1951〜)、マルコ・ザニーニ(1954〜)といった面々が在籍しており、日本からもインテリアデザイナーの倉俣史朗(1934〜91)や梅田正徳(1941〜)、建築家の磯崎新(1931〜2022)らが参画していた。

彼らによって色彩や形態、素材、装飾パターンなどといった様々なデザイン的実験がなされ、1981年の第1回メンフィス・コレクション展では55点の作品が発表された。会場ではソットサスをはじめとしたメンフィスメンバーらの作品も合わせて展示されている。


最終セクションでは、ソットサスがより感覚的な仕事を行うようになっていった1990年代以降の作品から、とくに数多く手がけたガラス器のデザインを並べて展示している。ガラスならではの透明感を活かしつつも、ロープや針金で組み合わせられたこの18点のシリーズ作品は、大胆さと繊細さが共存し、視覚的にも造形的にもソットサスの探究心がうかがえるものだ。

本展の副題に掲げられている「魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」という言葉について改めて考えてみる。デザインにおいて機能性は不可欠なものであるが、それが生活空間に置かれたとき、機能性を超えた先にある「人の心を揺さぶるもの」とは何なのだろうか。それを探求し続けたのがソットサスであり、彼がイタリアデザインを語るうえで欠かせない存在と言われる理由でもある。生活空間という場を心躍る魔法の空間にする。そのために生涯をかけて挑んだソットサスの思想と造形の在り方を、改めて通覧する機会と言えるだろう。



















