来場者を迎えるのは、モリスの初期作品のひとつである「サイン・ペインティング」シリーズだ。1990年代のニューヨークで本格的に活動を始めたモリスは、街中やホームセンターなどで目にした注意喚起の標識に着目した。アメリカ合衆国憲法にいまなお存在する自衛のための武器保有の権利を背景に、都市文化に根付いた過剰なまでの自己防衛意識を、皮肉を込めて描き出している。

「ミッドタウン」シリーズは、都市に林立する企業ビルを主題とした絵画作品だ。1990年代初頭、タイムズ・スクエア近くにスタジオを構えていたモリスは、大企業のビルがひしめく都市景観をモチーフに制作を行った。たんなる建築の抽象化にとどまらず、それぞれの企業が背負う物語や、ビルの所有や権限がつねに流動的であるという現代社会の不確かさも、作品のなかに織り込まれている。

そのほかにも、映像作品の音声データをもとに描かれた「サウンドグラフ」シリーズや、コロナ禍におけるステイホーム期間中に制作された「スパイダーウェブ」シリーズなど、モリスを代表する絵画作品が並ぶ。





















