パナソニック汐留美術館で、企画展「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」が開幕した。
本展は、20世紀の日本において「美しい暮らし」を求めて構想され、実践されてきた様々な運動や試みを、「ユートピア」という視点から読み解くものだ。担当学芸員は大村理恵子(パナソニック汐留美術館主任学芸員)。
「ユートピア」とは、16世紀イギリスの思想家トマス・モアの著作に由来する、「どこにもない場所」を意味する言葉である。さらに19世紀には、ウィリアム・モリスが『ユートピア便り』のなかで、芸術と暮らしの総合による理想社会を構想した。その思想が紹介された20世紀の日本では、急速な近代化の只中で、暮らしのあり方そのものを問い直す思考として「ユートピア」が共有されていく。

本展では、美術、工芸、建築、デザインに関わる作品や資料など約170点(会期中に一部展示替えあり)を通して、そうした「美しいユートピア」の歴史をたどると同時に、現代、そして未来への問いを投げかける。
会場構成は、昨年の大阪・関西万博でも注目を集めた建築コレクティブ「GROUP」が担当した。ユートピアを展望する装置としての「ユートピア観測所」をコンセプト、第1章から第5章まで、それぞれ異なる「ユートピア」の世界へと進んでいく構成となっている。
第1章「ユートピアへの憧れ」では、ジョン・ラスキンやウィリアム・モリスの思想に影響を受けた、20世紀初頭の日本の理想主義を紹介する。大正デモクラシー期、「民」は重要なキーワードとなり、西欧美術への憧れと同時に、自らの精神的ルーツを見つめ直す動きが広がった。
雑誌『白樺』を中心とする白樺派の活動や、柳宗悦による民藝運動は、民衆の生活のなかに美を見出そうとした試みとして位置づけられる。岸田劉生による《B.L.の肖像(バーナード・リーチ像)》(1913/東京国立近代美術館蔵)は、イギリスの陶芸家バーナード・リーチとの深い交流を示す作品であり、その国際的な思想の往還を象徴している。


































