アール・デコ時代、人々の注目をひときわ集めていたのは、モンマルトルのカフェ・コンセール、ムーラン・ルージュの人気女優、ミスタンゲットであった。「第5章 最高のヴィーナス、それは私!」では、このミスタンゲットをモデルとして手がけられた大型のグラフィック作品を展示している。画面いっぱいに表された華やかなスーパースターのすがたは当時の人々を魅了し、女性たちにとっても憧れの的であったに違いない。


パリのアール・デコ博覧会と同時期に建設されたのが、20世紀初頭のアメリカを象徴するマンハッタンの摩天楼(スカイスクレーパー)だ。フリッツ・ラングによるドイツのSF映画『メトロポリス』(1926)では超高層ビルがディストピア都市として描かれたように、当時のニューヨークの人々はこのビル群に未来を見ただろう。
そんな摩天楼のすがたと重ねられるのがジュエリーデザインだ。本展では、同時代のジュエリーとアメリカの摩天楼の資料をあわせて展示することで、国境やジャンル超えたアール・デコの広がりに着目している。



アール・デコは、人々の生活への影響のみならず、女性たちの社会進出とともにあり、後押ししてきた様式でもあったと言える。出展作品を通じて、当時の女性たちがどのような理想とともに歩み、新たな価値観を築きあげてきたのか。同展では、様々な切り口からアール・デコの一端を知ることができるだろう。
なお、会期中には関連イベントとして講演会や学芸員によるギャラリートークなども実施予定。ぜひあわせて参加してみてはいかがだろうか。



















