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「お父さん お母さんへ ハンセン病療養所で書かれたある少年の手紙」(国立ハンセン病資料館)レポート【3/3ページ】

 両親に宛てられたこの13通の手紙からは、勝彦とその家族、ひいてはハンセン病患者・回復者とその家族らが直面した、様々な困難や心情を読み取ることができる。両親からの贈り物が療養所の暮らしでの励みになったというものもあれば、大好きな祖母の死について知らされなかったことへの怒り。さらには、療養所の友人から「生きる意味」について問われ、将来を案じながらも自分で答えを出す姿も、これらの手紙には記されている。

展示風景より、「お父さん お母さんへ 家族への想い」。手紙のなかには、勝彦が観た映画の感想や、それを両親に勧めるような内容もあった。家にいれば気軽に話せるであろう他愛もない話も、容易ではなかったことがわかる
展示風景より、「お父さん お母さんへ 家族への想い」

 「療養所の入所者からの手紙がこれだけまとまって見つかる事例はほとんどない。というのも、ハンセン病に対する社会からの強い偏見や差別があったために、周囲に知られてしまうことを防がなければならなかったからだと考えられる」と担当学芸員の田代は推察する。そして、「現在もハンセン病に対する差別は続いている。これらの手紙を通じて、家族関係すら許されなかった国の隔離政策の問題を考えるきっかけとなれば」と語った。

長島愛生園で過ごした高校時代の原風景 2000頃 紙に水彩色鉛筆 個人蔵
写真提供=国立ハンセン病資料館
展示風景より。療養所からの手紙がまとまって残されているケースは滅多にないという。勝彦の母が息子からの手紙を手離さなかったのは、隔離された息子への愛情ではないか

 なお、会期中には関連イベントとして、手紙の朗読会や講演会、映画の上映会の数々が実施される。参加の場合は予約が必要となるため、詳細は公式ウェブサイトをチェックしてほしい。

編集部