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「岡山芸術交流2025」の見どころは? 「青豆の公園」でつながる非日常と日常【5/6ページ】

表町シェルター&表町アルバビル

 《今、この疾走を見よ》は、アンガラッド・ウィリアムズが執筆・パフォーマンスを行う実験的な詩的散文による6部構成、40分の映像作品。物語は断片的であり、監獄回想録、シューレレアリスティックなロマンス、終末的な風景といった異なるモードのあいだを揺れ動く。

 現代のエレクトロニック・ミュージック界でもっとも先見的なアーティストのひとりであるアルカ。表町商店街の雑居ビルにある廃墟のようなスペース。真っ赤なカーペットの中に設置されるのはマグネティック・レゾネーター・ピアノ(MRP、電子的に拡張され、弦から新たな響きを引き出し、幾重にも重なるクンッシェンドやハーモニーで振動を誘発する楽器)を使った《トランスフィクション》だ。MRPは会期中、アルカ自身のオリジナル楽曲を一日中演奏。AIが、アルカの個々の鍵盤タッチを学習し、会期のあいだ絶えず変化し続ける演奏を可能にする。

アルカ《トランスフィクション》

西川緑道公園

 映画音楽の世界で活躍するニコラ・ベッカーは、遠藤麻衣子と制作した新作《カカシ》を西川緑道公園の水辺に展示。岡山県内の鳥、絶滅した鳥など様々な鳥の声を流すことで、周囲の鳥たちとの対話を試みる。鳥を追い払うというカカシの伝統的な意味から脱却し、新たなカカシ像を提示するものだ。

ニコラ・ベッカー and 遠藤麻衣子《カカシ》

旧西川橋交番

 使われなくなった旧交番を会場とするのは、フランスのアーティスト、シプリアン・ガイヤール。自身のアーカイヴからのポラロイド写真、コラージュ、ゼラチン・シルバープリント、江戸後期に制作された異国人を描いた木版画を用いて、ここをごく個人的な空間へと変容させた。また岡山市から提供された、樹木に付けられていた多数の樹木板を集めて旧交番に保管・展示することで、ラテン語と日本語の両方でのラベリングから解放する試みも見られる。

旧西川橋交番
シプリアン・ガイヤール《木々が名を持たぬ場所》

編集部