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「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」(東京国立博物館)開幕レポート。運慶晩年の傑作、国宝7体が一堂に集う【3/3ページ】

 会場外縁を囲む四天王像は、現在は中金堂に安置されているが、北円堂の鎌倉復興期に運慶一門が造像したと考えられている。本展では三次元計測とCG検証を経て、放射状に外を向く配置で展示された。例えば持国天像は斜め外側を向け、その視線が弥勒如来と重なり、空間に調和をもたらす。

展示風景より、手前は国宝《四天王立像(増長天)》(鎌倉時代・13世紀)奈良・興福寺蔵 中金堂安置
展示風景より、手前は国宝《四天王立像(持国天)》(鎌倉時代・13世紀)奈良・興福寺蔵 中金堂安置

 四天王像の表現は奈良時代の天平彫刻を踏まえつつ、翻る天衣を廃し、すっきりとした下半身を採用。足元の甲や脛当の写実、中央に寄せられた面貌は東大寺法華堂の金剛力士像を想起させるが、運慶一門独自の迫力が加わる。静謐な三尊と激しい動勢をもつ四天王の対比は、本展空間をいっそう引き締めている。

展示風景より、手前は国宝《四天王立像(多聞天)》(鎌倉時代・13世紀)奈良・興福寺蔵 中金堂安置
展示風景より、手前は国宝《四天王立像(広目天)》(鎌倉時代・13世紀)奈良・興福寺蔵 中金堂安置

 さらに弥勒如来坐像は、昭和9年(1934)の解体修理で像内に納入品があることが確認されていた。今回の展示ではCT調査により、具体的な安置の状況が明らかになった。頭部内部には蓋板と厨子があり、そのなかに白檀製とみられる小弥勒像と願文が納められていた。さらに板状の五輪塔や経巻、水晶珠も安置され、背面に固定されていた。児島は「像内には清浄な小宇宙が構築され、運慶一門が極めて丁寧に信仰の対象をつくり上げたことがうかがえる」と語る。

 本展にあわせて、撮り下ろし写真を多数収録した図録や、俳優・高橋一生による音声ガイドも用意されている。オリジナルグッズも多彩に展開され、運慶芸術の精華を一堂に体感できる貴重な機会となっている。ぜひ足を運んで堪能してほしい。

編集部