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「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」(国立歴史民俗博物館)開幕レポート。表現規制をかい潜り庶民が求めた絵の魅力【3/7ページ】

 第2章「風刺画の登場」は、幕末に評判を呼んだ風刺画や時事を扱った錦絵の代表作を展示し、風刺画というジャンルの誕生を追う。例えば、1843年に売り出された歌川国芳画《源頼光公館土蜘作妖怪図》は、風刺画の歴史において重要な作品だ。

歌川国芳画《源頼光公館土蜘作妖怪図》(1943)国立歴史民俗博物館蔵

 本作は『前太平記』で親しまれた、平安時代の武将・源頼光と宿直の四天王のもとに現れた土蜘蛛が、様々な妖怪を現出させ困らせるというエピソードを描いたものだ。しかしながら本作の妖怪は、天保の改革による厳しい規制によって廃業を余儀なくされた職業を想起させるように描かれており、また四天王のひとりの着物の柄も改革を担った水野忠邦を想起させる。そのため本作は、妖怪が改革の犠牲になった人々の恨みの化身であり、頼光が将軍・徳川家慶、四天王が水野ら幕閣という解釈を人々からされるようになった。摘発を恐れた版元が本作を廃版としたが、それでも複数の偽版や模索版が生まれるほどの人気となる。これにより、風刺画というジャンルが錦絵に確固たる地位を築いた。

 本章ではほかにも、徳川将軍家の鹿狩りを源頼朝の巻狩りとして描いた歌川貞秀画《富士の裾野巻狩之図》(1848)や、ヤブ医者の療治が幕府や大奥を諷したものだとされた歌川国芳画《きたいなめい医難病療治》(1850)などを見ることができる。

展示風景より、歌川貞秀画《富士の裾野巻狩之図》(1848)国立歴史民俗博物館蔵
歌川国芳画《きたいなめい医難病療治》(1850)国立歴史民俗博物館蔵

編集部

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