20世紀の抽象表現において重要な作家であるブリジット・ライリーは、「応答する眼」展に出品するなど、オプ・アートとの関係は浅からざるアーティストだ。しかしながら、本人はオプ・アートの枠で語られることに否定的であったという。その作品は叙情や音楽的なリズムを取り入れており、細かな色線の連続が生むグラデーションは、見る者を楽しい気分にさせてくれる。
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最後に紹介するのはリチャード・アヌスキウィッツ。アメリカを代表するオプ・アートの画家であり、生涯オプ・アートのスタイルを貫いた。アメリカ国内のみならず世界各地で活躍、数々の賞を受賞しており、美術史上のオプ・アートの盛衰とは別に、このような作家の生涯も知られてしかるべきだろう。
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最後に、旭川美術館ならではの展示として、地元出身の作家である山口正城(1903〜1959)についても触れておきたい。デザインを指導しつつ、工業デザイナー・画家として活躍した山口は、世代的にも直接的にオプ・アートの作家に位置づけることはできない。しかし、平面作品に見られる線によって空間をつくり出すその手つきは、本展で展示されているオプ・アートの作家たちとの共通項が見いだせるはずだ。
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なお、展示の最後には、道内最大規模の科学館である旭川市科学館(サイパル)内の「錯覚いろいろコーナー」から出張するかたちで、錯視作品も展示されており、実際に作品に触れながら錯視を体験できる。また、展示室各所にある、子供向けの解説にも注目したい。オプ・アートは美術の前提知識に乏しい低学年の児童でもそのおもしろさを感じられるもので、本展ではその興味を補完する様々な工夫によって美術の間口を広げているといえるだろう。
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現代美術史の1ページに刻まれたオプ・アートだが、実際の作品を目にすると、いまも原初的な楽しみを持つ作品群であることがわかる。単体で取り上げられる機会の少ない希少なオプ・アートの特集展示。足を運んでみて作品を体感してみてはいかがだろうか。