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「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」の魅力とは。炭鉱と木造校舎の記憶をいまにつなぐ「芸術広場」【4/5ページ】

屋外展示

 アルテピアッツァは「芸術広場」を標榜しているとおり、施設のみならず広大な敷地の様々な箇所に点在している安田の作品も魅力のひとつだ。そのすべてが安田自身によって設置場所を決められており、場所そのものが作品といっても過言ではない。

屋外展示風景

 とくに、白大理石の彫刻《天聖》《天モク(モクはさんずいに「禾」)》と石舞台、池からなる「水の広場」はランドマークといえる存在で、夏季は子供たちが水に入って遊ぶこともできるが、冬季は積雪に埋もれ、彫刻も保護のため雪囲いがかけられている。

屋外展示風景より、雪囲いされた彫刻

 こうした積雪地域の庭園施設は冬季休館することも多いが、本施設は散策道の雪かきなどを行いながら通年にわたって開館している。同施設の学芸員の泉沙希は、冬季も開館している理由を次のように語った。

 「冬季の開館は労力を要しますが、雪景色のなかに佇む彫刻というのも安田の展示意図に沿うもの。四季によって変化する周囲の環境とともに見え方や感じ方が変わることも、安田の考える彫刻の魅力のひとつです。また、安田は自身が愛用する素材である白大理石と、故郷・美唄の雪景色という原体験が相関しているとも語っています。この季節ならではの体験を多くの人に楽しんでもらえれば」。

屋外展示風景

 実際に冬季の散策路を歩くと、雪景色の中で彫刻を見つけることにささやかな喜びを感じる。また、使用されている素材や表面の処理によって雪の積もり方などが異なることもわかり、より彫刻というメディウムの意味を考えさせられる。

屋外展示風景

 最奥部の森に佇むブロンズ彫刻《天聖》と《天モク(モクはさんずいに「禾」)》は、見るものに強い印象を与えるだろう。雪が積もり、先が見えない山奥にむかって昇っていくようなこの彫刻は、何かに祈る信仰のような気持ちを喚起する。

屋外展示風景より、《天聖》と《天モク》

 雪を踏む音や、時折飛び立つ鳥たち、足早に横切るキタキツネといった環境そのものも、本施設で彫刻を楽しむ際の重要な要素となっている。

屋外展示風景

編集部

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