19世紀の産業革命以来、永続的な進歩への信念を持ち続けたコルビュジエは、晩年になると人間、自然、テクノロジーが調和することを理想とし、自身の活動がその触媒となることを信じていた。その精神は、同時代の画家であったロシア出身のカンディンスキーとのつながりを持つこととなる。第3章「近代のミッション」では、そんなコルビュジエとカンディンスキーの絵画が並べられており、「放射」をテーマとした表現や、音やリズムの抽象的な表現の模索に共通点が見られるようだ。
また、コルビュジエの建築を撮影し続けたルシアン・エルヴェによる写真作品とカンディンスキーによる版画集『小さな世界』もともに並べられているほか、コルビュジエの永続的進歩の信念と詩的な空想が融合することで誕生した絵画シリーズ「牡牛」も展示。「調和する時代」といった理想を掲げながらも、どこか不穏さを感じさせる表現にも注目したい。
1958年にブリュッセル万博のフィリップス館を手がけたコルビュジエは、そこで最新テクノロジーを駆使した映像インスタレーション「電子の詩」を発表した。これはコルビュジエが提唱してきた「諸芸術の綜合」を、自身の建築と最新技術のインスタレーションを用いて体現したものであったという。本展では、当時の作品を調査しイメージ再現したものを第4章「やがて全ては海へと至る」にて上映している。
ル・コルビュジエといえば、多大な功績を残したその建築ばかりが注目されがちだ。しかし、その領域にとどまらない絵画などの芸術表現を見ることで、人間のすべての感覚を持って体感することができる「諸芸術の綜合」を掲げ、実践していたことがわかる。同氏によるこれらの表現活動を知ることで、また新たな視点からその建築を体験をすることも可能となるだろう。
※本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催される。