ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ「Dance Floor as Study Room—したたかにたゆたう」(山口情報芸術センター[YCAM])開幕レポート【4/4ページ】

 会場の黄色い壁の奥で展示されているのは、《指示》という作品だ。第二次世界大戦後にオランダがインドネシアに対して行った軍事介入について取り扱った作品で、現在オランダの王立陸軍士官学校に通う若い士官候補生にそれらが孕む問題について投げかけている。

展示風景より、《指示》(2009)。ファン・オルデンボルフの母親はインドネシア出身のオランダ人であり、日本による1942年からの植民支配により収容所での生活を経験しているという。会場のポスターは作家の父親が撮影したという母親の姿も
展示風景より、《指示》(2009)

 ファン・オルデンボルフの展覧会は、いつもユニークなアプローチであふれている。それは、マイノリティや社会課題に着目しながらもその「正解」について述べるのではなく、登場人物が様々な問いに直面しながら、迷い、対話をする様子をフラットに映し出しているからだ。

 本展についてファン・オルデンボルフは、「オランダ、日本、インドネシアといった3ヶ国の女性作家を取り上げた。国同士の過去の対立はあれど、それを超えたところにある女性たちによる共通した闘争、そして連帯の在り方に着目している」とし、作品や展示空間については「誰かを被害者にしない、多視点的なとらえかたを重視している。様々な作品(問い)が交差するというのは、実際の社会も同じでしょう」と語っている。

 なお、展示室の外には作品に関連する書籍を読むことができる空間が用意されているほか、会期中には様々な関連イベントも実施予定。詳しくは公式ウェブサイトをぜひチェックしてほしい。

展示風景より

編集部

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