ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ「Dance Floor as Study Room—したたかにたゆたう」(山口情報芸術センター[YCAM])開幕レポート【2/4ページ】

 ファン・オルデンボルフは近年、日本とオランダ、そしてインドネシアにゆかりのある女性アーティストのリサーチを進めており、そのなかには、YCAMのある山口県ともゆかりの深い、女優・映画監督の田中絹代(1909〜77)や、作家の林芙美子(1903〜51)も含まれている。本展では、こうしたアーティストたちに焦点を当てた新作とこれまでに制作された作品があわせて4点展示。舞台セットのような装置とともに展開されている。

 本展のタイトル名が含まれる最新作の《したたかにたゆたう─前奏曲》は、紛争や人生における葛藤を多視点的にとらえる作品だ。田中絹代や林芙美子による階級闘争を意識した作品のオマージュや、成田空港の三里塚闘争、クィアシーンに見られるレイブパーティなどをテーマに登場人物が語りあいながら、様々な課題や問いと向きあう姿が映し出されている。

 また、登場人物による「学校で習わないことをアーティストになってたくさん学んでる気がする」というセリフは、アートを通じた対話や相互理解の可能性を示すものでもあり、印象深いものであると個人的に感じた。

展示風景より、《したたかにたゆたう─前奏曲》(2024)。本作は、2026年に長編作品を発表予定のファン・オルデンボルフによるプレリュード的な位置付けの作品となる

 この作品の上映(上演)が終わると、会場はまるでひとつのダンスホールであったかのような音と光に包まれる。ほかの作品の音やセリフ、色がまぜこぜとなったこの空間は、多様な文化が入り混じる社会の姿に重ねられている。

展示風景より、《したたかにたゆたう─前奏曲》(2024)

編集部

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