江戸時代に入ると、儒教の受容は大きな変化を見せる。江戸時代の初期、徳川幕府は林羅山や藤原惺窩(せいか)ら儒学者を重用し、朱子学(*)を用いることによって幕藩体制の確立を進めていった。「第3章 江戸幕府の思想」では、こういった思想が反映された屏風や工芸品が紹介されている。
とくにこれらの美術品には「鳳凰」といった重要なモチーフがたびたび登場している。鳳凰は、混乱する世のなかで聖天子が現れたときに出現するとされる中国の霊獣で、『論語』においては孔子もその出現を心待ちにしていたことが伺えるほどだ。狩野派による屏風に見られるモチーフの描き方や構図のつくりかたも非常に洗練されており、本展における大きな見どころのひとつとなっている。
*──朱子学は、儒学のなかでもとくに主従関係の思想を重視した学問で、江戸幕府による統治に活用された。