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北川フラムがディレクションする新アートプロジェクト。「南飛騨 Art Discovery」とは何か?【2/4ページ】

拠点の健康学習センター

 南飛騨健康増進センターの一帯には様々な施設があり、そのうち総合案内所がある「健康学習センター」内には複数のアーティストの作品が展示されている。

 岐阜県大垣市の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)出身で、現在は同大学で教鞭をとるメディア・アーティストのクワクボリョウタの作品は、光と音によるインスタレーション。骨伝導スピーカーをつけて部屋に入り、光る玉の間をぬって歩くと、温泉街で収集された様々な音や声が次々と聞こえてくる。岩井俊雄による光を音に変換する作品《SOUND-LENS》(2001)を参考にしたという本作は、温泉入浴時の特異で心地よい距離感を再認識させる。

クワクボリョウタ《仮想温泉》 撮影=中村脩

 精神科病院で看護師として働きつつ、衣服制作を通して当事者研究を行ってきた津野青嵐は、3Dプリンタで食卓の形をしたヘッドピースを制作。ネガティブな思考を擬人化したものを“お客さん”としてあえてもてなすことで新しい関係を築く、というコンセプトだ。“お客さん”は精神障害の当事者コミュニティで使われていた言葉だというが、それに対してポジティブにアプローチするという発想は多くの人にとって有効だろう。

津野青嵐《おきゃくさま おごっつおう 食べてくりょ》 撮影=筆者

 フランス在住の釘町彰は、下呂にある巌立峡の5万4000年前の御嶽山の噴火によってできた風景に感銘を受け、日本画の技法で描いたモノリスと彫刻、映像によるインスタレーションを制作。長大な時間を意識させる本作は、人間のDNAに刻まれた膨大な死と再生の記憶を呼び覚ます。

釘町彰《来たるべきもの》 撮影=中村脩

編集部

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