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北川フラムがディレクションする新アートプロジェクト。「南飛騨 Art Discovery」とは何か?【4/4ページ】

屋外でのインスタレーション

 健康学習センターのすぐそばには飛騨川の支流である小川が流れ、その清流に沿って北東に歩いていくと、巨大な円筒が現れる。これは、岐阜県高山市出身で、人間の根源を追求したダイナミックなインスタレーションで知られる遠藤利克の作品。大地に直径10メートル、深さ4.5メートルの穴を掘って壁を設け、「管理されない自然」として放置するというものだ。遠藤はこの制作にあたり、昭和時代に地方でよく見られた、円筒の内面をオートバイが走り回る見世物を思い出したという。安全な場所からおずおずと底を覗き込む姿勢に、現代社会の問題に積極的に取り組もうとしない人々の退嬰が重ねられているかのようでドキリとさせられる。

遠藤利克《空洞の庭》 撮影=中村脩

 「自死」や「慰霊」をテーマに制作を続け、2021年から「満州国」を軸に過去の戦争について考えるプロジェクトを行ってきた弓指寛治は、約100枚の絵と言葉を描いた看板をエリア内の随所に展示。それらのもとになっているのは、下呂に残る民話と、戦時中に下呂にいた従軍看護婦の体験記、下呂から満洲へ渡った「鳳凰開拓団」の生存者の手記。里山に掘り起こされたさまざまな物語は、弓指が描く鳥と共に時空を超えて交差する。

弓指寛治《民話、バイザウェイ》 撮影=中村脩

  なお、弓指は今回アドバイザーとして、津野青嵐、鈴木初音、KOURYOU(EBUNE×あぐりとして参加)、坂田桃歌ら8名の若手作家の推薦やマルシェの企画にも携わっている功労者だ。

マルシェ「楽市楽座」より 撮影=中村脩

 下呂駅から南飛騨健康増進センター一帯までは無料シャトルバスで約30分。3時間あれば徒歩で大体全てのアート作品を鑑賞できるが、マルシェではワークショップも行われており、周辺には温泉のほか「小坂の滝」などの名所もあるので、できれば1泊してゆっくり巡ることをおすすめしたい。

 開幕式では古田知事が次回開催への意欲を見せており、今後の展開が楽しみなアートプロジェクトだ。

編集部

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