メキシコとニューヨークを拠点とするソディは、木、土、岩といった自然素材を用いたダイナミックな作品で知られている。作品には素材本来の質感を生かし、意図的に残された偶然の飛び散りや歪みが、自然そのものを切りとったような力強さと美しさを漂わせている。彼は自然と素材とが持つ無言の力と対話し、その偶発性を作品のなかに取り込むことで、鑑賞者に深い印象を与える。
いっぽう、東京と香港を拠点に活動する加藤は、人型をモチーフにした独特な具象作品で評価を受け、ニューヨークやロサンゼルス、ロンドン、パリなど国際的に活動の場を広げている。その作品は鑑賞者に多様な解釈を促し、つねに絵画の可能性を探究し続けている。近年では、キャンバスの枠を超え、木彫や布、石、金属など、様々な素材を用いた立体作品にも取り組み、その創造性はとどまるところを知らない。
加藤は「作品は自然や素材との対話であり、ホワイトキューブよりも自然や歴史ある空間でその生命力をより発揮する」と述べ、本展での両足院との調和を重視した展示を追求している。
本展では、新作を含むふたりの約30点の作品が展示。ソディは、そのインスタレーションは寺院空間に対する敬意と調和が重視され、寺院の美しさと競合しないように配慮されたと話している。「寺院の持つ美しさに対抗するのは無意味であり、作品はあくまで空間と共鳴するようなかたちで展示すべきだ」(ソディ)。
メキシコと日本という地球の反対側に位置するふたつの異文化のアーティストが、沈黙を通じて対話を織りなし、新たな調和を創り出している。本展を通して、来場者は作品を通じて異文化間の「黙」による共鳴と対話を感じとり、日常から離れた深い精神的な体験を味わうことができるだろう。
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