2階では、初期から80年代にかけて多様な方法で死に向き合うことで生み出された草間の作品が並ぶ。まず、注目したいのは49年に描かれた初期の代表作《残夢》だ。赤く荒涼とした大地で枯れたひまわりは、いまだ戦争の死の記憶が生々しく残る当時の空気を表しているようにも感じられる。
また、本展示室では57年に渡米し、60年代に「自己消滅」というコンセプトのもと、ベトナム反戦運動と呼応しながら実施された草間のヌード・パフォーマンスなども紹介されている。
70年代に入り、近親者の死や心身の不調に直面して帰国した草間は、直接的に死を感じさせる作品に取り組むようになる。会場中央にある《希死》(1975-76)は、1階の生命力あふれる《生命(REPETITIVE VISION)》とは正反対の印象を受けるソフト・スカルプチュア作品。冷たく輝く銀色のファルスがトレーに押し込められたその様は、死のイメージを喚起させる。
また、帰国後の草間が制作した詩も、死を強く意識したものも多い。本展では作品とともに壁面に記された、草間の言葉による創作にも注目してほしい。