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「私は死を乗り越えて生きてゆきたい」(草間彌生美術館)開幕レポート。草間の死生観はいかに作品に表れたか【3/4ページ】

 3階では、天井まで伸びる樹木のような最新のインスタレーション《再生の瞬間》(2024)が展示されている。筒状に縫い合わせた水玉模様の布に綿を詰めた本作は、枝を四方へと伸ばすような生命力にあふれている。

展示風景より、《再生の瞬間》(2024)、奥が《命の炎―杜甫に捧ぐ》(個人蔵、1988)©YAYOI KUSAMA

 このインスタレーションと組み合わされた平面作品が《命の炎―杜甫に捧ぐ》(1988)だ。キャンバスのうえに無数に描かれた水玉には尾が生えており、さながら生命の根源である精子のようにも見える。本作から感じる動的な印象は、そのまま本展示室全体にあふれる、生の躍動のイメージにもつながっている。

 4階では2010年に制作された草間が自作の詩を歌う映像が、合わせ鏡で無限に増殖するヴィデオ・インスタレーション《マンハッタン自殺未遂常習犯の歌》を見ることが可能だ。

展示風景より、《マンハッタン自殺未遂常習犯の歌》(2010)©YAYOI KUSAMA

 本作で草間が歌う詩には「去ってしまう」「天国への階段」「自殺(は)てる 現在は」といった、死への衝動を思わせる言葉が散りばめられているが、同時に「花の煩悶(もだえ)のなかいまは果てなく」「呼んでいるきっと孤空(そら)の碧さ透けて」といった爽やかで、永遠を感じさせるようなイメージも内包している。死に向き合いながら、新たなものを生み出す制作を続けてきた草間の両義的な言葉が、見る者の心に訴えかける。

展示風景より、《マンハッタン自殺未遂常習犯の歌》(2010)©YAYOI KUSAMA

編集部

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