続いて4Fの展示室では、カナレットの制作の秘密に迫る。まだ写真がない時代、構図や遠近感をつかむため、カナレットは、カメラ・オブ・スキュラと呼ばれる、カメラの祖先となる原始的な光学機器を使っていた。展示では、実際にカメラ・オブ・スキュラの原理を再現した体験コーナーも用意されている。
また、素描とそれに基づいて制作された銅版画を比較することで、カナレットは必ずしも現実の風景をそのまま切り取って再現していたわけではないこともわかる。 “お土産品”としての意味合いも強いヴェドゥータでは、実際の景観に加え、旅の思い出となるような都市のランドマークを見栄え良く配置する工夫も求められた。
こうして「ヴェドゥータ」という新たな風景画でヨーロッパ中にその名を轟かせたカナレットだが、そうなると彼の画風に倣ったフォロワーたちも続々と活躍の場が与えられることになる。展示室では、彼の甥で後にワルシャワやドレスデンなどで宮廷画家として活躍したベルナルド・ベロット、カナレットがヴェネツィアを不在にしていた時期に台頭したとされるグアルディなど、カナレットに続くヴェドゥータの名手たちの作品も披露されている。先駆者の作風を踏襲しながらも、少しずつカナレットとは違う個性の表出も感じられるので、よく見比べて楽しんでみてほしい。