第二展示室では220センチメートルの《Much ado about love - Kappa》(2009)と、285センチメートルの《3MMM - Melt&messy》(2023)が向かい合う。
前者はアメリカのセックスシンボルであるマリリン・モンローと、妖怪の代表である河童を組み合わせた作品だ。どちらもその名前を聞いただけでイメージが即座に脳裏に浮かぶアイコニックな存在だが、それらが組み合わさると匿名性と所在のなさが前景化すると同時に、意味を超えたその慄然とした大きさが意識される。
後者は人間の生きられる寿命の限界に近い120年を生きた木を素材に、世界最大の人間の身長としてギネスブックに記録されている285センチメートルの高さを持つに至った作品。そのモチーフとなっているのは、森が「美のMAXスケール」と称するミロのヴィーナスだ。浜辺に寄せる波のように不均衡でとらえどころのないその身体は、不確かで言語化が難しいものだが、その巨大さは眼の前に確実に存在するという事実を鑑賞者につきつける。
いっぽうで、この第二展示室で森は、東大寺南大門の金剛力士像をモチーフとした高さ約5センチの像《On the hand - Statues of Kongo Rikishi》(2023)や、空也上人立像の口から出る仏をイメージした《On the hand - Statues of liberty》(2021)といった目を凝らさなければディティールをとらえられないような小型の木彫も制作している。こちらも彫刻の「大きさ」を問いかける作品といっていいだろう。
彫像における大きさとはなにか。それはたんなる物理的な大きさに留まるのか。何をモチーフにしているか、歴史的な彫刻からいかなる影響をうけているのか、鑑賞者の心理的はどのような状態か、そういった複雑な要素が絡み合うことで「大きさ」は生まれているのではないだろうか。森が巨大な彫像をつくり続けることで投げかけられた問いは、興味深い示唆に富んでいる。ぜひ、会場で実物と対峙してみてほしい。
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