ヘラルボニーが主催する国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2024」。その初回のグランプリを、浅野春香《ヒョウカ》が受賞した。
ヘラルボニーは国内外の主に知的障害のある作家の描く2000点以上のアートデータのライセンスを管理し、ビジネスへと展開している企業。今年、LVMH イノベーションアワードで部門賞を受賞するなど、ますます注目を集める存在だ。
「HERALBONY Art Prize 2024」は、ヘラルボニーが障害を持つ作家の才能を評価し、活躍の道を切り開いていくために創設した賞。審査員は、クリスチャン・バースト(ギャラリー・クリスチャン・バースト創設者)、黒澤浩美(金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター)、日比野克彦(アーティスト/東京藝術大学長)、盛岡笑奈(LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター)が務めた。審査基準は「独自の視点を持ち、新たな芸術創造性があるか」「社会に新たな視点や変化を投げかけるような独創性があるか」「多様性を体現する、自由な発想があるか」の3点となっており、海外28ヶ国を含む1900点を超える応募があったという。
グランプリを受賞した浅野春香は20歳で統合失調症を発症後、入退院を繰り返しながら闘病を続けてきた。絵を本格的に描き始めたのは29歳のときであり、今回の受賞作品《ヒョウカ》は「評価されたい」という作家の純粋な感情から制作されたという。
キャンバス代わりに使われたのは、30kgの米袋を切り広げたもの。そのシワをポスカでなぞり、色を埋めていったという。満月の夜のサンゴの産卵をテーマに、満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが緻密に描かれた本作。母親の胎内にいた頃の情景や、サンゴの研究者である父親のことなど、作家にとって大切な存在である両親からインスピレーションを受けているという。浅野は「グランプリをいただいてとても嬉しい」と率直な感想を述べた。
浅野には、創作活動を奨励する資金として賞金300万円が贈られるほか、ヘラルボニーと作家契約を締結し、今後様々なライセンス起用により国内外にその異彩を発信していく。
主催者でヘラルボニー共同代表の松田崇弥は、「受賞して終了ではなく、様々な出口も用意している。今後毎年開催し、大きく成長させたい」と、あらためて本アワードを国際的に成長させる意欲を覗かせた。
なお、8月10日からは受賞作品展が三井住友銀行東館1階のアース・ガーデンでスタート。本展では浅野のグランプリ作品のほか、企業賞受賞作品、審査員特別賞受賞作品および最終審査進出作品として総勢58名の作家による全62作品が並ぶ。
企業賞は、内山.K(東京建物|Brillia賞)、大家美咲(sangetsu賞)、岩瀬俊一(JR東日本賞)、カミジョウミカ(JINS賞)、フラン・ダンカン(丸井グループ賞)、水上詩楽(JAL賞)、澁田大輔(トヨタ自動車賞)が受賞。審査員特別賞は、スーザン・テカフランギ・キング(クリスチャン・バースト賞)、isousin(黒澤浩美賞)、S.Proski(日比野克彦賞)、鳥山シュウ(盛岡笑奈賞)となった。