第二章「日本の夏」には、魁夷以外の作家による浮世絵から近代・現代日本画が並ぶ。
富士山を多く描いた横山大観だが、いっぽうで海も多く描いた。大観の《夏の海》(1952)は、夏の夜に浮かぶ銀色の月と、岩にぶつかって砕ける波が描かれており、技法には大観が得意とした「片ぼかし」が用いられている。
また、川端龍子の《鳴門》(1929)も海を描いた大作。群青をふんだんに使い描かれた本作は、白波が際立つダイナミックな表現だ。
上村松園の《蛍》(1913)も夏ならではの風景だろう。蚊帳を吊る女性と、そこに入ってきた1匹の蛍。構図は喜多川歌麿の浮世絵《絵本四季花(上)雷雨と蚊帳の女》(1801)を参照にしたとされており、浴衣には、当時流行だったアール・ヌーヴォー風の百合が表現されている点にも注目だ。
このほか、江戸時代の夏の風物詩だった虫売りの屋台と、籠の虫に夢中になる子供たちを描いた伊藤小坡の《虫売り》(1932)や、黒田清輝の油彩画《湘南の海水浴》(1908)、夕立から逃れて雨宿りする人々を描いた池田輝方の《夕立》(1916)など50点以上が並ぶ本展。幅広い作品を通じて、日本の夏ならではの風情を感じてほしい。
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