長野県の善光寺東隣城山公園内に位置する長野県信濃美術館。東山魁夷館は、画家本人からの作品寄贈により1990年4月に開館し、今年で開館30周年を迎えた。同館は、東山魁夷本人から寄贈された作品に加え、のちに収集・寄贈された作品を含めると、所蔵点数は970点を超える。貴重なスケッチや習作も多数所蔵し、作品の完成までをたどることができる数少ない美術館として知られる。
今回同館では、東山魁夷館開館30周年記念特別展として「東山魁夷 日本画への出発」を開催(9月25日~11月23日)。本展は、東山魁夷が画家として活動をはじめた初期の時代に焦点を当て、東山“新吉”が、いかにして現代を代表する日本画家・東山“魁夷”に成長したのか、その背景に迫るものだ。
戦後に風景画家として開眼し、画壇の中央に迎えられた東山。終戦までの軌跡は、日本画家として己を貫き、地歩を固める時代であり、国民的画家・東山魁夷となるうえで欠くべからざる道だったといわれる。本展では、東山が世に注目される以前の初期時代の作品を見ることができる。