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2023.5.20

東京のビジネス街に「異彩」を。ヘラルボニーによる過去最大規模のグループ展に16作家が参加

「異彩を、 放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」が、東京・大手町にある三井住友銀行東館1階のアース・ガーデンでグループ展「ART IN YOU アートはあなたの中にある」をスタートさせた。会期は6月17日まで。

展示風景より
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 「異彩を、 放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」による過去最大規模の展覧会「ART IN YOU アートはあなたの中にある」が、三井住友銀行東館1階のアース・ガーデンで始まった。会期は6月17日まで。

 ヘラルボニーは、国内外の主に知的な障害のある福祉施設や作家と契約を結び、2000点を超える高解像度アートデータの著作権管理を軸とするライセンスビジネスを展開。また、作品をファッションやインテリアなどのプロダクトに落とし込むアートライフスタイルブランド「HERALBONY」の運営や、建設現場の仮囲いに作品を転用する「全日本仮囲いアートミュージアム」など、福祉領域の拡張を見据えた多様な事業を手がけている。

 会場となる東京・大手町の三井住友銀行東館1階アース・ガーデンは、天井高9メートル以上、床面積は約470平方メートル以上という巨大空間だ。ヘラルボニーがこの規模のギャラリーで展覧会を開くのは今回が初だ。

展示風景より

 参加作家は、伊藤大貴(あいアイ美術館・埼玉)、井口直人(さふらん生活園・愛知)、内山.K (希望の園・三重)、大家美咲(やまなみ工房・滋賀)、鎌江一美(やまなみ工房・滋賀)、GAMON(一般社団法人 HAP・広島)、衣笠泰介(京都)、木村全彦(アトリエやっほぅ!!・京都) 、 国保幸宏(アトリエやっほぅ!!・京都) 、坂本大知(自然生クラブ・茨城)、志多伯逸(わかたけアート・沖縄)、高田祐(自然生クラブ・茨城)、早川拓馬(希望の園・三重)、藤田望人 (大分)、森啓輔 (希望の園・三重)山際正己(やまなみ工房・滋賀)。

展示風景より

 5月19日の報道内覧会では、三重の「希望の園」から内山.K、森啓輔、早川拓馬が会場を訪れ、ぞれぞれ自身の作品について解説を行った。0.5ミリのペンを100種類以上駆使して細密な画面を構成する内山.K、施設の中にあるレコードジャケットをモチーフにした森、そしてぎっしりと描かれた電車のなかに好きなアイドルの姿を浮かび上がらせる早川。いずれも作家たちが自らの思うがままに描いてきたもので、そこからは並々ならぬ愛情と熱意が感じ取れる。

展示風景より、内山.K《マックィーン クワガタの地図》と《トリケラパークの地図》
展示風景より、森啓輔《Let it be》と《ジャックリーン》
展示風景より、早川拓馬《通過電車だらけのポーズ》と《踊りながら通過列車》

 東京のなかでも屈指のビジネス街に集結したこれらの作品。ヘラルボニー代表取締役社長の松田崇弥は、「様々な異彩が日本全国から集まった。この場所でそれらが放たれることは感慨深い。様々な企業の方々にも知ってもらうことが重要」と、この場所での開催意義を語る。

 また代表取締役副社長の松田文登はへラルボニーについて「市場の拡張以上に、思想を拡張したいという思いでやってきた」としつつ、「ヘラルボニーを社会へと広げるとき、『障害』と言う必要なく、作品の魅力がフラットに届いていってほしい。その契機となれば」と意気込みを見せた。

展示風景より
展示風景より、山際正己《正己地蔵》

 本展では、金沢21世紀美術館チーフキュレーターの黒澤浩美がキュレーションを担っていることも大きな特徴だ。黒澤はへラルボニーの企画アドバイザーも務めており、彼らの活動を「新しい」と評価する。「福祉施設で造形活動をする作家たちを囲い込むのではなく、ライセンス化することで道を開いた。アートの世界と福祉の世界は今後、ゆるやかにシームレスになっていくだろう」。

 また黒澤は、本展についてこう期待を寄せている。「表現者のメッセージを鑑賞者が受け止めるとき、何かが生まれてほしい。展覧会タイトル『ART IN YOU』にある『YOU』は鑑賞者である皆さん。自分の中に芽生えたものを誰かに共有してもらえたら」。

報道内覧会にて。左からへラルボニーの松田文登、松田崇弥、金沢21世紀美術館の黒澤浩美、早川拓馬、森啓輔、内山.K、希望の園施設長の村林真哉