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人間と環境の関係性を問いかける。第2期「インター + プレイ」展が示唆するものとは?

十和田市現代美術館が2010年に完成させた「Arts Towada」プロジェクトの10周年を記念し、全3期にわたる企画展「インター + プレイ」が開催中。第2期では「バルーン」と「クモ」をキーワードに、アルゼンチン出身のアーティストであるトマス・サラセーノの新作や近年の代表作が紹介されている。会期は2022年1月10日まで。

展示風景より

 2008年に開館した十和田市現代美術館は、十和田のまち全体をひとつの美術館に見立て、多様なアート作品を展開していくという「Arts Towada」プロジェクトを2010年に完成。同プロジェクトの完成10周年を記念し、全3期にわたる企画展「インター + プレイ」が昨年より開催されている。

 2022年1月10日まで開催されている第2期では、同館常設展示作家のひとりであるトマス・サラセーノの作品が展示。常設作品《オン・クラウズ(エア-ポート-シティ》ともつながりのある「バルーン(空気)」と「クモ」をキーワードに、新作や近年の代表作が紹介されている。

常設展示より、トマス・サラセーノ《オン・クラウズ(エア-ポート-シティ》

 同館の学芸員・中川千恵子は、「サラセーノの作品を理解するうえでひとつ重要なコンセプトは、いま私たちが生きている『人新世』(=アントロポセン)という言葉。つまり、人間が地質学的な歴史を変えてしまうほど環境に影響を及ぼしている状態というところが彼にとって非常に強い関心であり、『空気』と『クモ』もそこから関わっているものだ」と語っている。

 中川によると、サラセーノは化石燃料の使用による二酸化炭素の増加が地球温暖化につながっていることをつねに考えており、「クモ」は、私たちが言語や知識で自然を理解してその関わり方をつくることとは異なり、感覚を研ぎ澄ませて環境を感じる手本としてフィーチャーされているという。

展示風景より、トマス・サラセーノ《熱力学の組曲》

 例えば、《熱力学の組曲》は、空気や鑑賞者の動きによって風船が移動し、吊り下げられたペンがドローイングを生み出すインスタレーション。ペンのインクには世界でもっとも大気汚染が深刻な都市のひとつであるインド・ムンバイで採取されたブラックカーボン(黒色炭素)が入っており、大気汚染の本質を示しながら、普段意識していない空気の動きを美しく可視化している。

展示風景より、トマス・サラセーノ「エアログリフ」「クモの糸のマッピング」シリーズ

 「クモの糸のマッピング」シリーズは、実際にクモが空間につくった巣を紙にマッピングした作品で、周囲の環境に対してクモがどのように反応して巣をつくったのかをたどることができる。

トマス・サラセーノ 大気の海の底に棲む(スチール) Courtesy of the artist. © Tomás Saraceno

 《大気の海の底に棲む》は、水中で生活するミズグモの姿に迫った映像作品。生物が新しい環境に適応するために生活様式を変化させる可能性を示しながら、私たち人間の生き方についても問いかける。

 なお、「インター + プレイ」展の全期作品として鈴木康広《はじまりの果実》は引き続き同館の前庭にて展示。まちなか展示としては、目[mé]が第1期に発表した作品で2階建の建物にホワイトキューブを埋め込んだ《space》内に、新作《movements》が紹介されている。

編集部

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