日本のアートコレクターのあいだでもっとも注目されているアーティストのひとり、山口歴。その個展「LISTEN TO THE SOLITUDE」を、銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMとOIL by 美術手帖で見ることができる。
山口は1984年東京都生まれ。90年代から2000年代初頭の東京、裏原宿のストリートカルチャーの変遷を経験して育ち、2007年に渡米。現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している。渡米後はアメリカのストリートカルチャーで重要な位置を占めるALIFEやBILLIONAIRE BOYS CLUB、FTC、NIKEなど、ストリートを代表するブランドの他、ISSEI MIYAKE MEN、LEVI’S、OAKLEY、UNIQLOといった企業とのコラボレーションも行なっている。
その作品は、初期から一貫して絵画表現における基本的要素である「筆跡/ブラシストローク」に焦点を当ていることが特徴。代表的なシリーズである「OUT OF BOUNDS」では、「固定概念、ルール、国境、境界線の越境、絵画の拡張」というコンセプトのもと、筆跡自体がキャンバスという枠組みを越え、空間に存在しているような立体的な絵画作品を制作し続けている。
この筆致自体を作品とするアイデアの着想源は、山口が小学1年生で油絵を始めるきかっけとなったゴッホや、強烈なストロークで知られる白髪一雄、あるいは幼い頃から習っていた書道だという。「自分のなかの原風景が筆跡なんです。ゴッホや白髪、書道などが合わさったのが自分なのかなと」。
渡米後、やりたいことに迷っていた時期に、グッゲンハイム美術館で見た白髪の作品が山口の背中を押した。「人が描きたいのか、風景が描きたいのか迷っていた時期もありましたが、白髪の作品を見て、ストローク自体が描きたいんだと気づいたんです。それを浮かせたらどうだろうと思いつき、いまに至っています」。
「LISTEN TO THE SOLITUDE」と題された本展。GINZA SIXの銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(会期:8月30日~9月14日)では、横幅7メートルにもおよぶ《MÖBIUS NO. 17》(2021)をはじめとする巨大な平面作品6点が披露された。
また、とくに注目したいのが山口にとって初となる立体作品《PROMINENCE NO.1》(2021)だ。自然や人間が存在するために不可欠な太陽の現象「プロミネンス」のエネルギーを表現した本作。250を超える平面作品を生み出してきた山口が、「次のレベルに行きたい」という想いから生み出した意欲作となっている。
なお、銀座 蔦屋書店ではこのほか山口が写真家・瀬尾宏幸、伊丹豪とコラボレーションした新作のエディション作品も展示。またOIL by 美術手帖(会期:8月27日~9月6日)では、小規模な平面作品を見ることができる。
今後もますます注目度が高まるであろう山口歴。その現在形をぜひチェックしておきたい。