近年、フォートワース現代美術館やデトロイト現代美術館、ビクトリア国立美術館、ブルックリン美術館など次々と美術館個展を開催し、勢いを増すKAWS(本名:ブライアン・ドネリー)。その日本初となる大規模個展「KAWS TOKYO FIRST」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで始まった。
KAWSは1974年アメリカ・ニュージャージー生まれ。90年代初めにグラフィティアーティストとして頭角を現し、その後93年から96年までニューヨークの美術学校「School of Visual Arts」で学ぶ。バス停の看板に広告を描いた作品などを通じて知名度を上げ、90年代にはグラフィティアート界の一員となり、両目が「✕✕」になったキャラクターはいまや世界的に知られる存在だ。
本展のために来日したKAWSは「日本に初めて来たのは90年代半ば。早い段階から友人ができ、これまで40〜50回は来日している」と日本への思い入れを語る。
コロナ禍という特殊な状況下での開催となった今回。KAWSは「残念な状況で理想的ではない」としながらも、「この規模の展覧会できるのはとても幸運。いまの状況は受け入れなければならないが、できることをやっていく」と意気込んだ。
本展「KAWS TOKYO FIRST」は、2001年に渋谷パルコで開催されたKAWSにとって日本初の個展と同名のタイトル。その理由については、「私のなかでひとつのサイクルが終わったと感じたから」だという。「前回の渋谷の個展は私にとってベンチマーク的な意味を持っており、同じタイトルにすることで原点回帰ができないかと考えた」。
そんなKAWSにとって節目となる本展の会場には、コマーシャルアートとファインアート双方の領域を網羅するKAWSの視覚的アプローチに迫る、絵画や彫像、プロダクトなどが多数展示。その活動の軌跡をたどることができる。
KAWSは「大規模な展覧会をする意味は、ひとつのところに焦点をあわせる必要がないということ。全体のストーリーを共有できるのが意義深い。包括的な洞察ができるし、来場者は私の興味の変遷を見ることができる」と本展に期待を込める。
会場でとくに注目したいのは、KAWSが保有するプライベート・コレクションの展示だ。KAWSは自身のInstagramでも度々スタジオの写真を投稿しており、その様子が展示室内に再現された。「私はつねづね、ほかのアーティストのことを知りたいと考えている。(展示室に)スタジオを持ち込むことで、自分が毎日どういったものと暮らしているのかを見てもらいたいし、個人的なスペースを共有したかった。気に入ったアーティストがいれば調べてみてほしい」。
コレクションにはヘンリー・ダーガーやマイク・ケリー、エド・ルシェといったアーティストが含まれており、KAWSがそこからどのようなインスピレーションを受けているかを想像するのも楽しいだろう。
「つねに自分の心に従い活動してきた。その時々で正しいと思うこと、そして違和感がないことが重要」だと話すKAWS。その20年来の興味の変遷を、会場で体感したい。