昨年10月より移転のため休廊していた現代美術ギャラリーのNANZUKAが、渋谷区の神宮前3丁目に新たなフラッグシップ・ギャラリー「NANZUKA UNDERGROUND」を竣工させた。6月5日にオープンする。
「NANZUKA UNDERGROUND」は路上に面した4階建ての建築で、1階と2階がギャラリースペース、3階より上はバックオフィスとなっている。外装のカスタムペイントをアーティスト・中村哲也が手がけており、新築ながらも年月を重ねた汚しが、独特の存在感を醸し出している。
また、正面入口の上部に据え付けられたギャラリーのロゴマークは、女性の人体美をロボットに投影した「セクシーロボット」シリーズなどで知られる空山基の手によるもの。外装とともに訪れる者に強烈な印象を与える。
オープニングを飾るのはモリマサトの新作個展「Lonsdaleite Year」だ。モリマサトは1976年徳島県生まれで、現在も徳島市内を拠点に制作をおこなっている。モリはNANZUKAの所属アーティスト第1号であり、05年当時の会館時の名前「NANZUKA UNDERGROUND」を再び冠した新天地の開幕にふさわしいアーティストと言える。
展示は、キャンバスへのペインティング12点とブロンズの立体作品4点を中心に構成。モリが徳島での自身の日常生活をつづった絵日記ともいえるシリーズで、1階のエントランスを入ると、大型のキャンバス作品やブロンズに着色した立体作品が来場者を迎える。これらはモリ自身の興味の対象である、昆虫採集や川遊び、動植物の育成、ゲームやマンガといったものがモチーフとなっている。「NANZUKA UNDERGROUND」の1階は高い天井高を有しており、モリの複数のキャンバスを組み合わせた大型の絵画も難なく展示されている。
モリはペンタブツールで描いたグラフィックを下絵に、異なるテクスチャーを油彩やアクリルを組み合わせながら重ねていく。さらに、こうして完成したペインティングを下敷きに色鉛筆でドローイングを作成。また、そのドローイングを下絵としてブロンズ製の立体作品も制作している。モリの、同一のイメージを異なるメディアでとらえる独特の視線に注目したい。
2階もホワイトキューブの展示スペースとなっており、ここにもペインティング、ドローイング、立体と様々なメディアが展示される。モリの作品には自身の姿が多く登場しており、その姿とともに描かれた鮮やかな色による日常の景色を、テクスチャーの質感とともに楽しめる。
今後「NANZUKA UNDERGROUND」ではハロシ、クリスチャン・レックス・ヴァン・ミネン、ワハブ・サヒードと展覧会が続く予定となっている。近隣にはワタリウム美術館やGALLERY TARGET、MAHO KUBOTA GALERYなどもあり、神宮前一帯がアートスポットとしてより盛り上がりを見せそうだ。